365 SS 4.30
―――今日もいる。 向こうの席に座ってる女の子を見つけて、5メートル離れたくらい、斜め向かいの場所へ着席した。 いつも勉強しに来てる女の子。 話した事は無いけど、きっと自分と同じ。 来年の受験へ向けて勉強をしてるんだろう… もっと読む 365 SS 4.30
4月1日~30日までの『今日は何の日?』をテーマにしたショートショート(フラッシュ・フィクション)を集めました。
毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショートを書いています。
30日分のショートショートです!
―――今日もいる。 向こうの席に座ってる女の子を見つけて、5メートル離れたくらい、斜め向かいの場所へ着席した。 いつも勉強しに来てる女の子。 話した事は無いけど、きっと自分と同じ。 来年の受験へ向けて勉強をしてるんだろう… もっと読む 365 SS 4.30
懐かしい匂いにつられるように床へ寝転んだ。 まだまだ青い、イグサの匂い。変えたばかりの新しい畳の匂い。 鼻から息を沢山吸い込む。期待のこもった溜息のように「は〜〜〜」口から吐いた。 それを2、3繰り返し、思い出したように… もっと読む 365 SS 4.29
晴天の午前、パチン、小気味の良い音が響く。 「お茶菓子用意したので休憩してください」 「お!ありがとうございます!」 奥様に声を掛けられて縁側にお邪魔する。仲間にも声を掛けて、3人で小さな丸いお盆を囲んだ。 奥様からそれ… もっと読む 365 SS 4.28
カポーーン 鹿威しが思い切りの良い音で響く。 風呂と言えばタオル、温泉といえば露天、まっ白なお湯に湯気、竹のフェンスの向こうには山。 夜空を見上げようと顔を上げると、頭に乗せてたタオルが落ちて結局湯に浸かった。 それを隣… もっと読む 365 SS 4.26
「先輩!初任給、何に使いました?!」 弾けんばかりのテンションで聞かれた。 あぁ、若いなぁ。キラキラしてて眩しい。私も昔はそんなだったかな、なんて考えた。 「えーと、初任給?何に使ったっけな……。」 「えっ覚えてないんで… もっと読む 365 SS 4.25
植物は何でも知ってるし教えてくれる。 水が足りなければ葉は萎れていくし、 土が悪ければ枯れてしまう。 環境があえばスクスクと根を伸ばす。 すぐに沢山葉をつけるモノもあれば、何年も時間をかけて少ししか伸びないモノもいる。 … もっと読む 365 SS 4.24
「べつに、いい、やらない。」 とうとう言ってやった。とうとうそう言ってやった。 やらない、って言うことは大事なことだ。 先生は『あなたは本ばかり読んで』なんて言うけど関係ない。 僕にとっては、本を読まないあなたのほうが『… もっと読む 365 SS 4.23
会社の廊下で見つけた。 観葉植物に隠すように捨てられているゴミを拾おうか拾わないか、迷った。 〝ゴミ拾い〟 それは、とても聞こえが良いかもしれない。 だけど、このご時世では、ゴミ一つ拾うことさえ考え込んでしまう時があるの… もっと読む 365 SS 4.22
「なんか面白い番組ないね〜」 振り返ると彼女がリモコンを持っていた。明るい笑い声が響く。画面のテンションが9回切り替わる。 既視感のある画面が現れ始めたところで、ブツンと画面が真っ暗になった。 「だからお前は!消すなっつ… もっと読む 365 SS 4.21
赤い箱を乗せたバイクが二つ、連れ立ち赤信号で待機している。 先頭に止まっているバイクの運転手が後ろへ振り返り、にこやかに話しかける。 後ろのバイクの運転手は初々しい表示で笑った。 2人とも紺色にラインが入った制服。白のヘ… もっと読む 365 SS 4.20
何かにつまづき転んで膝をついた。 足元をよく見ると、ちいさな小石。 ふぅと一息ついて、そのままそこへしゃがみこんだ。 今日はこの辺にしておこう。 夕刻。太陽が海の際へと飲み込まれていく。 ゆっくりゆっくり。 消え入る太陽… もっと読む 365 SS 4.19
凛とした音色の余韻が心地よく響いている。 仏壇の前に座ると、心を鎮める事が出来る。 チャッカマンでお線香に火をつけた。 ちょっと風情が無いけど、現実的にはこんなものだ。 四角い線香皿には幾重もの灰が重なり、砂のようになっ… もっと読む 365 SS 4.18
雨の日の博物館は空いている。 時々通り過ぎるお客さんを見守りながら定位置に居るのが自分の仕事。 ガラスに映る大きな恐竜の標本を見ながら、昼に何を食べるか考える。 食堂にあるカレー、それとも外にある蕎麦屋、牛丼、天丼。 窓… もっと読む 365 SS 4.17
雄大な大地を見渡し、男性は思いを馳せる。 澄み渡る空、青々と茂る芝。点々と静かに草を食む羊、遠くの方に見える街並み。 Boys, be ambitiousという文字、遠くを指すクラーク博士像。 少年よ大志を抱け。 男性は… もっと読む 365 SS 4.16
エレクトロなファンファーレから始まるミュージック。 暗闇から近づいてくる大きなパレード専用フロート車。 近年は家庭で一般化されつつあるLED電飾や発光ダイオード、光ファイバーや電球がキラキラ輝く。 噂によると最近の電球は… もっと読む 365 SS 4.15
遠くから見ても解るオレンジの実が付いている、真っ白な花をつけた木。 車窓から見える一瞬のオレンジ色に目を奪われる。 定感覚で植えられたオレンジの木。 夜には暗くなってしまうから、朝の出勤時だけに見られる風景。 混み合う電… もっと読む 365 SS 4.14
お好きな席へどうぞの声と同時に入店を知らせるカランカラン、鈴が鳴った。 店内を見回せば、備え付けのテーブルと、申し訳程度のちいさな椅子。 外の様子が見える窓際かモクモクと煙りの立つ喫煙席か。 呼ばれるように奥へ進むと、空… もっと読む 365 SS 4.13
カリッカリの香ばしい表面に歯を立てて、ガリリと噛んだ。 噛みちぎるのも難しい程の堅さ。 どうにか引きちぎって何度も咀嚼する。 むぐむぐむぐ。 何度も何度も噛んでいると、ほんのりとした甘みが溢れ出した。 まあるい堅さの表面… もっと読む 365 SS 4.12
釣られて天を見上げた。 青い青い空に浮いた野球ボール。太陽がまぶしくて、手のひらで陰を作った。 アレを取ればスリーアウト。9回裏、試合終了、ぎりぎりセーフで逃げ切り勝ち。 オーライ、オーライ、 みんなの声が響く。斜め上を… もっと読む 365 SS 4.11
新しい毎日が始まる。 新しい部屋、新しいカーテン、新しい照明、まだ馴染まない私。 新しい冷蔵庫、新しい電子レンジ、コンロ、シンク。 新しい机、新しいフローリング、新しいラグ 新しい洗濯機、新しいお風呂場。 全部ぜーんぶ新… もっと読む 365 SS 4.10
大きな大きな、平たいてのひら。 大きな大きな、そのからだ、あご。 真下にいる私なんてちっとも見ずに、まっすぐ遠くを眺めてる。 「でっかいねぇ〜」 「ね〜。」 大仏を観に来た。 大仏ってのは、意外と色んなところにある。 奈… もっと読む 365 SS 4.9
そうして丁寧に砂を払い、土を掘りすすめると、一体の大きな像が姿を現した。 布を腰にまとった女性の像。真っ白な彫刻が美しい。 探すように土をかき分けるけど、腕は見つからなかった。 遠くを見つめるような表情。まさに神話のヴィ… もっと読む 365 SS 4.8
ある日ポストを開けたら小さな小包が入っていた。 開けてみると5センチほどの小瓶と、いちまいのカード。 『満期のため、保険金を支払っております。粗品も合わせてご使用ください。』 と書いてあった。 「粗品?」 小瓶には『一回… もっと読む 365 SS 4.7
「白いと言ったら、」 続きが言えなくて言葉に詰まってゲームに負けた。罰ゲームはデコピン。 順番に4人にデコピンされていく、 あの子もデコピンに加わって、俺のオデコへバチンと当てる。 「いっ、ってぇえええ、」 思いのほかデ… もっと読む 365 SS 4.6
古い、汚い、狭い路地に惹かれて奥へ進んだ。 橙色の提灯(ちょうちん)が並ぶ夜の横町。 小径へ目をやると立ちションしてるおじさん。 へべれけで肩を組むサラリーマンとすれ違う。 とんこつの匂いにむせそうになって、誰かのゲロを… もっと読む 365 SS 4.5
ふにふにの柔らかな触り心地と、香ばしい匂いと、ずしっと安定感のある重み。 指に力を入れると、指に沿ってふわりと凹んだ。 低反発マクラのように、むむむっ、とゆっくり押し返してくる。 はむりと嚙みつけば、しっとりとした柔らか… もっと読む 365 SS 4.4
「にこにこ、おかあさん。 にこにこ、わたし。 びっくりがお、おかあさん。 びっくりがお、わたし。 かなしいかお、おかあさん。 かなしいかお、わたし。 すまほみる、おかあさん。 おかあさんみる、わたし。 ちょっとまってね、… もっと読む 365 SS 4.3
そんなにもあなたはレモンを待っていたーーー 道端に転がるひとつのレモンを見て思い出した。 『レモン哀歌』高村光太郎の詩だ。 男性というのは、とかく女性に想いを馳せがち。女のために頑張りがち。女を美化しすぎ。 女遊びの激し… もっと読む 365 SS 4.2
ひんやりした袖口に腕を通す。 パリッとした硬い綿の感触が慣れなくて気持ちが悪い。 嗅ぎ慣れない真新しい匂い。ビニールに入ってたからかほんのりガソリンくさい気がする。 鏡を見ると、見慣れないシャツ姿の自分がいる。 ドキドキ… もっと読む 365 SS 4.1