弾けんばかりのテンションで聞かれた。
あぁ、若いなぁ。キラキラしてて眩しい。私も昔はそんなだったかな、なんて考えた。
「えーと、初任給?何に使ったっけな……。」
「えっ覚えてないんですか?!」
「えー、うん。初任給って言っても、その前にバイトしてた事があるからなー。初給料では無いんだよね〜」
「いやいやいや!それはバイトじゃないっすかあ!」
「バイトした事ある?きみ」
「ないっす!」
「でしょうねえ〜」
そう返すけど、ワクワクが止まらない様子の新人くん。
「初任給っすよ!何に使おうかな〜!ようやくこれで俺も、大人の仲間入りっすね!」
「ほ〜」
今日は初の給料日らしい。
私の初任給は何に使ったっけなぁ。
親に何か買ってあげようとしたら、たしか、『あたしは良いから、自分のために使いなさい』って言われちゃって、結局、思い出に残るような使い方なんてしてないんだよなあ。
「先輩!」
ふと横を見ると、新人くん。通帳を見ながらなんだか悲しそう。
あっと言う間にATMへ行って、初任給を通帳に書き込んで来たらしい。
「どうしたの?」
「初任給が……もう減ってました……」
「え?もう?なんで?」
「家賃がすでに引き落とされてて……。そう言えば、自動引き落としにしてました……」
そう言って、がっくり肩を落とす新人くん。
通帳で大きな額を見たかったのに、早速減っててガッカリしたようだ。
「……ようやく大人の仲間入りだね。」
そう声をかけたら、
「大人になるってツライっすね……」
なんて言うから笑ってしまった。
新人君は、社会の厳しさを早速知ったようだ。
4月25日は初任給の日!初任給の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–