足元をよく見ると、ちいさな小石。
ふぅと一息ついて、そのままそこへしゃがみこんだ。
今日はこの辺にしておこう。
夕刻。太陽が海の際へと飲み込まれていく。
ゆっくりゆっくり。
消え入る太陽がオレンジに染める海。
じっくりじっくり。
太陽が飲まれた後も、余韻で暫し明るい空。
ーー夜がやってくる。
ギリギリまだ明るい内に、使えそうな木々を拾い集め枯葉を集め。
焚き木に火を付けた頃には真っ暗になっていた。
満点の星空。
今日は天気が良い。
ケロベロスの尻尾を握るヘルクレスが逆さまに。
ヘルクレス、りゅう座、へびつかい座にこぐま座。
天空に、いちばん明るく輝く北極星。
天空に並ぶたくさんの星。
そのうちのひとつ、地球。
他の星から見た地球は、どんな色をしてるのだろう
丸い地球のうちの、どのあたりに私は居るのだろう。
思惑を巡らせる。天空に想いを馳せ、自分の位置に想いを馳せ。
歩いて歩いて、あの星たちを観測していけば、地球のうちの日本の位置が解る。
地球という星の中の、日本という国。
そうして老人は足元の小石を拾い上げた。
じんわり優しい目をして小石を天へと掲げる。
老人は、小石に宇宙を見たのかもしれない。
4月19日は地図の日(最初の一歩の日)!地図の日(最初の一歩の日)をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–