365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 4.19

何かにつまづき転んで膝をついた。

足元をよく見ると、ちいさな小石。

ふぅと一息ついて、そのままそこへしゃがみこんだ。

今日はこの辺にしておこう。

夕刻。太陽が海の際へと飲み込まれていく。

ゆっくりゆっくり。

消え入る太陽がオレンジに染める海。

じっくりじっくり。

太陽が飲まれた後も、余韻で暫し明るい空。

ーー夜がやってくる。

ギリギリまだ明るい内に、使えそうな木々を拾い集め枯葉を集め。

焚き木に火を付けた頃には真っ暗になっていた。

満点の星空。

今日は天気が良い。

ケロベロスの尻尾を握るヘルクレスが逆さまに。

ヘルクレス、りゅう座、へびつかい座にこぐま座。

天空に、いちばん明るく輝く北極星。

天空に並ぶたくさんの星。

そのうちのひとつ、地球。

他の星から見た地球は、どんな色をしてるのだろう

丸い地球のうちの、どのあたりに私は居るのだろう。

思惑を巡らせる。天空に想いを馳せ、自分の位置に想いを馳せ。

歩いて歩いて、あの星たちを観測していけば、地球のうちの日本の位置が解る。

地球という星の中の、日本という国。

そうして老人は足元の小石を拾い上げた。

じんわり優しい目をして小石を天へと掲げる。

老人は、小石に宇宙を見たのかもしれない。

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4月19日は地図の日(最初の一歩の日)!地図の日(最初の一歩の日)をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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