365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 4.28

晴天の午前、パチン、小気味の良い音が響く。

「お茶菓子用意したので休憩してください」

「お!ありがとうございます!」

奥様に声を掛けられて縁側にお邪魔する。仲間にも声を掛けて、3人で小さな丸いお盆を囲んだ。

奥様からそれぞれ冷えた麦茶を頂く。
グラスに入った氷がカランと鳴って、松の小枝に留まるウグイスがホケキョと鳴いた。

「おせんべいですが、良かったら食べてください。」

「ありがとうございます!」

青空に映える緑を眺めながら麦茶を飲む3人。

最近あんまり無いから嬉しいね、と1人が言う。

「最近無いんですか?」近くにまだいた奥さんが話しかけた。

「あー、はは。そうなんですよ。最近はお茶もお煎餅も、出してくれないお家も多くて。時代の流れですねぇ。あんまり貰わないように、とも言われてるんですが。」

「そうですか」

「ええ。奥さんとこはいつも良くして貰っていて。いつもご贔屓に。」

「うちの主人も、古いお人ですから」

「はは。ありがてぇです。」

ぱたぱたと飛び回るウグイスが、ホケキョとまたひとつ鳴いた。

「親方さんは、庭を見るのがお好きなんですね。」

そう言われて親方が無口になる。

職人、昔気質。頑固で無口。

「仕事なんでね」

両脇に座る若い2人が笑った。

「僕らやっぱり庭が好きでやってますから。」

居心地良さそうに舞う深緑。ピョンと飛んでホケキョと鳴いた。

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4月28日は庭の日!庭の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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テーマの著者 Anders Norén