「お茶菓子用意したので休憩してください」
「お!ありがとうございます!」
奥様に声を掛けられて縁側にお邪魔する。仲間にも声を掛けて、3人で小さな丸いお盆を囲んだ。
奥様からそれぞれ冷えた麦茶を頂く。
グラスに入った氷がカランと鳴って、松の小枝に留まるウグイスがホケキョと鳴いた。
「おせんべいですが、良かったら食べてください。」
「ありがとうございます!」
青空に映える緑を眺めながら麦茶を飲む3人。
最近あんまり無いから嬉しいね、と1人が言う。
「最近無いんですか?」近くにまだいた奥さんが話しかけた。
「あー、はは。そうなんですよ。最近はお茶もお煎餅も、出してくれないお家も多くて。時代の流れですねぇ。あんまり貰わないように、とも言われてるんですが。」
「そうですか」
「ええ。奥さんとこはいつも良くして貰っていて。いつもご贔屓に。」
「うちの主人も、古いお人ですから」
「はは。ありがてぇです。」
ぱたぱたと飛び回るウグイスが、ホケキョとまたひとつ鳴いた。
「親方さんは、庭を見るのがお好きなんですね。」
そう言われて親方が無口になる。
職人、昔気質。頑固で無口。
「仕事なんでね」
両脇に座る若い2人が笑った。
「僕らやっぱり庭が好きでやってますから。」
居心地良さそうに舞う深緑。ピョンと飛んでホケキョと鳴いた。
4月28日は庭の日!庭の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–