そうして丁寧に砂を払い、土を掘りすすめると、一体の大きな像が姿を現した。
布を腰にまとった女性の像。真っ白な彫刻が美しい。
探すように土をかき分けるけど、腕は見つからなかった。
遠くを見つめるような表情。まさに神話のヴィーナス。
アートに詳しくなんてなくても一目で解った。こんな美しい像は見たことがない。天から落ちてきたんじゃないかとさえ思う。誰かが作ったなんて信じられない。
……いっそこのまま、誰にも見つからないように隠してしまおうか。
腕がないヴィーナス。
その腕は、いったいどんな動きをしていたのだろう。
大きな柱に手をかけていたのだろうか。悪魔の実、アップルを掴んでいたかもしれない。
この美しい女性の腕の先は……
ミロス島で見つかったヴィーナスは、『ミロのビーナス』として今でも大切に保管されている。
不完全なその姿に、沢山の人の想像を乗せてーー。
フラッシュ・フィクション。4月8日はヴィーナスの日。ショートショート(ショートストーリー)毎日『今日は何の日?』をテーマに書いています。–そうして丁寧に砂を払い、土を掘りすすめると、一体の大きな像が姿を現した。布を腰にまとった女性の像。真っ白な彫刻が美しい。探すように土をかき分けるけど、腕は見つからなかった。