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365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 4.8

そうして丁寧に砂を払い、土を掘りすすめると、一体の大きな像が姿を現した。

布を腰にまとった女性の像。真っ白な彫刻が美しい。

探すように土をかき分けるけど、腕は見つからなかった。

遠くを見つめるような表情。まさに神話のヴィーナス。

アートに詳しくなんてなくても一目で解った。こんな美しい像は見たことがない。天から落ちてきたんじゃないかとさえ思う。誰かが作ったなんて信じられない。

……いっそこのまま、誰にも見つからないように隠してしまおうか。

腕がないヴィーナス。
その腕は、いったいどんな動きをしていたのだろう。

大きな柱に手をかけていたのだろうか。悪魔の実、アップルを掴んでいたかもしれない。

この美しい女性の腕の先は……

ミロス島で見つかったヴィーナスは、『ミロのビーナス』として今でも大切に保管されている。

不完全なその姿に、沢山の人の想像を乗せてーー。

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フラッシュ・フィクション。4月8日はヴィーナスの日。ショートショート(ショートストーリー)毎日『今日は何の日?』をテーマに書いています。–そうして丁寧に砂を払い、土を掘りすすめると、一体の大きな像が姿を現した。布を腰にまとった女性の像。真っ白な彫刻が美しい。探すように土をかき分けるけど、腕は見つからなかった。

何の日?/4月のアーカイブ一覧①

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テーマの著者 Anders Norén