365 SS 9.16
一瞬を駆ける 結局は賭け事だから、自分が賭けた馬が勝つかどうかがまず問題だ。 だけどそれでも、目を見張る馬はいる。大して強くも無い、故障も多い、それなのに目を奪われる馬は居る。 走る姿はまるで海のようだ。流れる毛並み、締… もっと読む 365 SS 9.16
エモーショナル…心が揺さぶられるようなお話を集めました。
嬉しい、哀しい、苦しい、楽しい、怒り……、そんな〝感情〟を揺さぶられる事を、人は心の奥深くで望んでるのでは無いでしょうか。
思いっきり泣きたいとき、笑いたい時、見たら絶対に泣いてしまう物語を見たくなる時。
自分自身に直接起きた物事ではない〝物語〟には、どこか安心して感情をぶつけられるのかもしれません。
一瞬を駆ける 結局は賭け事だから、自分が賭けた馬が勝つかどうかがまず問題だ。 だけどそれでも、目を見張る馬はいる。大して強くも無い、故障も多い、それなのに目を奪われる馬は居る。 走る姿はまるで海のようだ。流れる毛並み、締… もっと読む 365 SS 9.16
『聞きたい?』 じぃぃ、とソレを見ていたら声を掛けられた。 パイプ椅子の上に置かれた古い蓄音機。 鳴るのかただのオブジェなのか、興味があった。 『あ、はい!』 おじさんは針を動かし、レコードへと当てる。 ゆっくり回るレコ… もっと読む 365 SS 7.31
強さとは何だ?強さとは、ーーー心の強さだ スロー再生のように見えた、相手から繰り出されるパンチ、拳が自分の顔面へまっすぐ向かって来ていた、強くなりたい強くなりたい強くなりたい ーーーーいける、 全身の血の気が引くみたいだ… もっと読む 365 SS 5.19
細長いロンググラスに入れられる氷。 コロコロと音を鳴らす。 注がれるのは喉が焼けるみたいな鋭いテキーラ。 それから舌を華やかに飾るオレンジジュース。 カランと音を立ててマドラーがかき混ぜる。 それから注がれる赤いグレナデ… もっと読む 365 SS 5.13
鵜飼いの日、という事で今日は岐阜県へやってきた。燃えるかがり火が、夜の川を泳ぐようにボウボウと舞う。 明かりが川に反射して、その水中を鵜が進む。首を延ばして前へ前へと泳ぎながら、水中へ潜りこみ足だけが水面へ浮かぶ。 6隻… もっと読む 365 SS 5.11
あの日の出来事が忘れられない— 煌々と燃える家を見上げる。空へ空へと伸びる炎が轟々と音を立てながら、灰色の煙が天へと昇って行く 何かが弾ける音と軋む音が聞こえる 目の前の炎が迫ってくるような感覚 顔の表面だけがやけに… もっと読む 365 SS 3.29
砂漠にひとりの女が立っている。 遠くを見つめる強い眼差し。 雄大なオレンジの砂漠は手前から奥までずっと続く。 まるでこのままどこまでも砂漠しか無いかのような世界。 風は強いのだろうか 纏った色鮮やかな生地がなびく 朝陽な… もっと読む 365 SS 3.28
しんゆう 遠くのほうからやってきて/あなたとわたしは あるとき出会った。 密に接して時には涙し/笑いながら記憶をつくった。 気づけば少しずつズレた道は/ずいぶん遠くのほうに行っていて/そのことに気付いた時には/もう戻れな… もっと読む 365 SS 3.21
七段の雛飾りを眺めている少年が、そこには居た。 しゃんと背筋を伸ばして、ちゃんと正座をして。 どんな行動を起こすんだろうと、見守るつもりで、部屋を通り過ぎるたびに、目をやった。 だけど少年は、静かにそこにいる。 3度目通… もっと読む 365 SS 3.3
噛み締めた感触は、むぎゅりと歯に触る弾力。 ようやくおにぎりを口に含んだ。 砂のような口内に、ほんの少し、お米の甘みを感じた。 世界は今日も朝を迎えてて、いつもと変わらずなんでもない日を過ごす73億人。 シンクの下に眠っ… もっと読む 365 SS 1.17
「南極って……いつもこんな、寒いんですか?」 受け取ったカップで指先を温めながら問いかけた。呂律も凍ってしまいそうな極寒。 「……今日は、あったかい方だけど」 チラリと目線を上げるもんだから目が合った。ハッキリ意思を伝え… もっと読む 365 SS 12.14