365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 5.11

鵜飼いの日、という事で今日は岐阜県へやってきた。燃えるかがり火が、夜の川を泳ぐようにボウボウと舞う。

明かりが川に反射して、その水中を鵜が進む。首を延ばして前へ前へと泳ぎながら、水中へ潜りこみ足だけが水面へ浮かぶ。

6隻。船の先端に座る鵜匠の表情が、かがり火に照らされて見えた気がした。まっすぐ鵜を見つめる鵜匠。

闇夜の中、揺れるかがり火と水面に映る明かり、チラチラと見える鵜ーー

1300年以上前から続けられている鵜飼い。古くから伝わる清く流れる川。

源頼朝、織田信長、チャップリン、天皇様、松尾芭蕉。

歴史を越えた伝統を彼らも見たと思うとジワリ、妙な汗をかいた。

時空を越えたような気がした。

End.

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テーマの著者 Anders Norén