『聞きたい?』
じぃぃ、とソレを見ていたら声を掛けられた。
パイプ椅子の上に置かれた古い蓄音機。
鳴るのかただのオブジェなのか、興味があった。
『あ、はい!』
おじさんは針を動かし、レコードへと当てる。
ゆっくり回るレコード盤。
すぐに古い音が聞こえてきた。
プツ、プツ、と一定のスピードで混じる雑音。
流れる音楽よりも、その雑音が愛おしい。
『動くんですねぇ』
『スピードがちょっと遅いけどね』
スピードが遅いらしい。私には良く分らない。
古びたその音は、懐かしい気がした。
かつて、蓄音機を製品化したエジソンも、同じ音を聞いたんだろうか。
End.