365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 7.31

『聞きたい?』

じぃぃ、とソレを見ていたら声を掛けられた。

パイプ椅子の上に置かれた古い蓄音機。

鳴るのかただのオブジェなのか、興味があった。

『あ、はい!』

おじさんは針を動かし、レコードへと当てる。

ゆっくり回るレコード盤。

すぐに古い音が聞こえてきた。

プツ、プツ、と一定のスピードで混じる雑音。

流れる音楽よりも、その雑音が愛おしい。

『動くんですねぇ』

『スピードがちょっと遅いけどね』

スピードが遅いらしい。私には良く分らない。

古びたその音は、懐かしい気がした。

かつて、蓄音機を製品化したエジソンも、同じ音を聞いたんだろうか。

End.

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テーマの著者 Anders Norén