365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 5.13

細長いロンググラスに入れられる氷。

コロコロと音を鳴らす。

注がれるのは喉が焼けるみたいな鋭いテキーラ。

それから舌を華やかに飾るオレンジジュース。

カランと音を立ててマドラーがかき混ぜる。

それから注がれる赤いグレナデンシロップ。

ゆっくりとグラスの底へ沈んで、綺麗なグラデーションを作る。

それはまるで燃える朝焼け。

だから名前もテキーラ・サンライズ。

グッとグラスを傾けると、テキーラの鋭さが喉を刺す、それからオレンジ、グレナデンシロップの甘さ。

鋭さの中にある、ご褒美みたいな赤いシロップ。

何度も何度も恋に落ちるーー

静かな店内で、心の中でロックを流した。勿論、ローリングストーンズだ。

End.

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テーマの著者 Anders Norén