遠くから見ても解るオレンジの実が付いている、真っ白な花をつけた木。
車窓から見える一瞬のオレンジ色に目を奪われる。
定感覚で植えられたオレンジの木。
夜には暗くなってしまうから、朝の出勤時だけに見られる風景。
混み合う電車の中でも、ついついその場所に来ると窓の外を見ようとしてしまう。
サラリーマンのスーツとOLのカバンの隙間から、今日もとついつい頭を傾けた。
流れ去る風景、一瞬のオレンジと白い花。
今の時期だけ見れる、毎朝ちゃんと来る自分へのご褒美。
最後のオレンジの木が通り過ぎる瞬間、いつもはいない男の人が居るのが見えた。
キャップを被りパーカーを着てた男の人。一瞬だけの横顔。剪定の人か、それともオレンジをくすねに来たのか。
オレンジの木の花言葉は『気前の良さ』。
きっと少しくらいくすねても、オレンジは怒らず渡してくれるだろう。
(いいなぁ)
なんだか無性に羨ましくなった。
朝の一瞬の出来事。
今日も、仕事がんばろう。
なぜだか優しい気持ちになった。今日は爽やかな一日になるだろう。
4月14日はオレンジデー!オレンジデーをテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–