私は、よく〝無性に帰りたくなる〟時がある。
どこと行っても特に〝あの場所〟という、お気に入りの場所は無い。
景色が綺麗な場所だとか、落ち着く場所だとか、〝お気に入り〟にも色々あると思う。
だけど、〝あの場所に行きたい〟という場所が無い。
にも関わらず、なぜか無性に〝帰りたい〟と思う瞬間がある。
どんな時に〝帰りたくなる〟のか?
現在私は実家から離れた場所に住んでいる。
今住んでいる家は結構気に入っている。
住めば都ってやつなのだと思う。
〝無性に帰りたい〟時は、基本的に、心細いとき。
しかしこの〝心細い〟がまた厄介だ。
心細いと言えども誰かといても〝帰りたくなる〟し、
たとえ今住んでる家に居ても〝帰りたくなる〟。
ならば実家なんじゃないかと思いきや、実家は実家で居心地が悪い。
どうしてなんだろうと自分でもよく分らなくて、もう一歩踏み込んで考えて見ることにした。すると、なんとなく、思い当たるタイミングが見えてきた気がした。
〝帰りたい〟時は、〝自分の感情がうまく表現出来ない時〟なのかもしれない。
〝帰りたい〟は、自分的には〝還りたい〟のほうがしっくりくる。
今居るこの場所になんとなく疎外感を覚える。
本当は空の向こう側に、私の本当の〝居場所〟があるんじゃないか?そんな感覚。
〝地球〟じゃなくて、どこか遠くの宇宙から自分はやってきたんじゃないか?そんな感覚。
自分の居た〝星〟がどこかにあるんじゃないか?そんな感覚。
還って、どうしたいのか?
それで、じゃあ私は還ってからどうしたいのか?を考えてみた。
すると、誰かに何かをしてほしいとか、そうゆう事では無いな、と思った。
〝安心したい〟という欲求なのかもしれない。
自分の落ち着く場所を探している。
例えばテレパシーみたいに自分の思ってることや考えてる事が〝イイカンジ〟に伝わって、例えば悪意や妬み嫉み、そんな事を考えてる生物はどこにも存在しなくて、みんながみんなを思いやる、そんな世界。
それが〝優しいかどうか〟はまた別として、全ての生き物が〝衝突しないように〟程よい距離をあけて生活する世界なのかもしれない。
人は時に誰かと強く繋がりたくて、時に誰かと感情を共有したい。
だけどそのとき共有してるものが本当に全く同じなのかと言うと、蓋を開けてみると全然違うのかもしれない。
というか、全くおんなじ事をまったく同じに考えてたら怖いな、なんて思ってしまう。
結局人は人で、それぞれ違うことを考えてるから、どこか安心して過ごせてるんじゃないかと思う。
自分の考えてる事がすべて筒抜けで聞こえてしまったら、きっと居心地の悪さしか無い、争いの耐えない世界になってしまう気がする。
安心出来る場所
私は昔から、疲れてる時や哀しいとき、哀しい気分に浸りたいとき、つまり〝無性に帰りたくなる〟時、布団にこもるクセがある。
過干渉で育ってきたのもあり、〝本当にひとり〟になれる場所が無いような感覚があるのだ。
部屋に閉じこもっていても心配されて部屋に入ってくる。
風呂場でこっそり泣こうと思っても、あんまり長い時間こもっていると、これも心配して声を掛けられる。
街の中にいても誰かが存在していて、〝本当にひとり〟になれる場所はそう無い。
とは言えひとりで真っ暗な小さな部屋に居るのは恐ろしい。(心配性なので、無駄な妄想をして怖くなるのだ)
自分が〝長い時間居ても心配されない場所〟を探していたのかもしれない。
自分ひとりで居ても、安全な場所で、心ゆくまで穏やかに〝ひとり〟でいたかったのかもしれない。
一番長い時間、誰にも邪魔されず安心出来る場所が、布団の中だったのかもしれない。
つい最近までも、無意識に布団の中にこもっていた。
布団を被って目を閉じて、外と世界を遮断するように。
けれどそれでも〝帰りたい〟気持ちは収まらない。
還る場所は、〝自分の中〟だったのかもしれない。
それが最近、〝還りたい〟気持ちに ならなくなった気がする。
なんでだろう?と考えてみた。
最近やっている事と言えば、〝自分自身を見つめ直す〟こと。
それを始めてから、私は随分自分の事を解ってきた気がする。
自分で自分を認める事で、少しずつ自信がついてきた気がする。
自分の感情が、前よりもほんの少し、解るようになってきた気がする。
〝もう誰も構わないで。そっとしておいて。ほおっておいて〟
以前はそんな気持ちで布団の中に入っていた。
いじけて拗ねて、〝どうせ誰も私の気持ちなんてわからない〟と全てを否定していた気がする。
だけど最近は、布団にこもると〝安心する〟気持ちになる。
自分だけの匂いで自分だけの空間。自分にまとわりつく毛布が触れて居心地が良い。
もしかすると、還る場所は〝自分〟なのかもしれない、と思った。
自分の事を前よりも理解して、自信がついて。
自分の事を理解してくれる〝自分〟という存在に出会って、ようやく私は、〝還る場所〟を見つけたのかもしれない。