365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 6.10

チンチン、懐かしい鐘の音が近づいて来て振り返った。


響く鐘の音はまるで鈴のように可愛らしい。

路面電車だ。

コトコトとゆっくりと進む路面電車。

今はめっきり減ってしまった路面電車・・・、いや、そもそも路面電車が走ってる時代に私は生まれてなかったか。

路面電車を見ると懐かしい気持ちになるのは何故だろう。

未だに街で見かける公衆電話ボックスや和式トイレ、黄ばんだ元・白のファックス。

そういったものはどれも汚らしくて好きじゃ無いのに、路面電車は古くさくても可愛らしく見える。

「かわい~!懐かしいね~!!」

先を歩く女子高生がはしゃいで写メを撮っている。あ、今はもう『写メ』なんて言わないか。

「かわい~!!」

かわいいかわいいとはしゃぐ女子高生とアラサーの私。

『かわいい』と『懐かしい』は、意外と全世代共通の感覚かも、なんて笑ってしまった。

End.

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テーマの著者 Anders Norén