バグッて横や縦に延びきった画面、電子音すら延びっぱなしでまだまだ続く『ビーーー』。
これはもうリセットするしかないと赤い小さな四角を押し込む。
一瞬黒になってから画面がふりだしに戻る。そうして聞き慣れたファンファーレが始まった。
音を聞くとまさにこれが冒険の始まりだと気持ちが引きしまる。
音楽だけでちょっとした勇者になったような気がする、自分にとってはそんな思い出のゲームだ。
のめり込めば自分を呼ぶ声もどうでもよくなってしまう。るあるときは夕飯を食べるのすらどうでも良くなる。ある時は明け方まで止まらなかったこともある。
何が楽しいのかというとソレがなんだったのか今ではもう解らない。
ただただそこには、自分が冒険を動かしているという想いだけーー。
そんなひとときを思い出して、ふっと笑った。
もうゲームなんてする年齢じゃないけれど、久しぶりにやるのも面白いかもしれない。
あのころと違って大人になった自分を叱る人はもういない。
あらくれものになる勇気は現実ではないけれど、今なら『いいえ』を選び続けて遊ぶ余裕くらいはある。
同じ時代を生きてきたスーパースターが見当はずれなことをしていて笑ってしまった。
この世界の中なら、自分のほうが先輩だなと、ちいさな自信を持てること。
懐かしい感情を思い出した。
END。
5月27日はドラゴンクエストの日!ドラクエの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–