「忘らるる 身をば思はず ちかひてし 人の命の 惜しくもあるかな」
「え?」
空を見ながら突然彼女がそんな事を言った。
彼女、いや、今となっては、もう元彼女か。
「……な、なに?575?」
「百人一首だよ」
「百人一首?そんなの好きだったっけ?」
「なんか今とつぜん思い出したんだよね〜」
「ふーん……。で、どうゆう意味?」
「逃した魚は大きいってこと」
「はい?」
「うーん、分かりやすく言うと……死んじまえって事かな」
「はっ?!」
「じゃーね!」
今まで、別れ話をしてそんな爽やかに去って行った彼女が居ただろうか?いや、いない。
「……」
ありがとう、と言いたかったけど、やっぱり言えなくて、ただその後ろ姿を見送った。
逃した魚が大きいってのは、こうゆう事なのかもしれない。
5月27日は百人一首の日!百人一首の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–