小さな気泡がクリームのように浮かんでいる。
深緑色をほんのり覗かせ、淡い緑色が泡立つ。
大きな湯飲み茶碗を両手ですくい上げる。
両手の平をめいっぱい使ってようやく収まるほどの茶碗。
やさしいミルク色のうわぐすり。飲み口は素の粘土色が縁取っている。
ずっしりとした温かさが手に馴染む。そのまま口元へ持って行って、ゴクリとひとくち、お抹茶を頂いた。
ゆったりとした青の匂いが口内に広がる。
くちあたりはクセが無く、スッキリと流れるように。
どことなく柔らかくて、甘い味わい。
くるりと店内を見回す。
昔ながらの落ち着いた雰囲気。
ダークブラウンの箪笥(たんす)や棚。
壁には薄墨で描かれた着物を着た女性の絵が飾られて、テーブルには懐かしい風合いの砂糖入れ。
淵が赤く塗られたお盆の上には、ちょんと添えられた切り花。
大正ロマンを感じながらひととき。
アンティークらしい天井の照明を見上げながら、柔らかいため息をついた。
End.