365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 5.16

「ツキヒはハクタイのカカクにして」

「ん?」
「行き交う人もまた旅人なり」
「どうゆう意味?」
「月日というのは旅人のようなものだってこと」
「行き交うは?」
「通り過ぎる人もまた旅人のようなものだってこと」
「ふーん」
「舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらえて老をむかふる物は、日々旅にして旅を栖とす。」
「それは?」
「船頭は船の上に生涯を浮かべるように生き、馬子は馬の轡(くつわ)を引いて老いを迎える…、みんなそれぞれ毎日旅をしている。毎日旅して、旅を住処(すみか)としているようなものである…ってこと。」
「どんだけ旅好きなんだよ」
「たしかに。」
「あ〜、俺も旅行に行きてぇな〜」
「たとえばどこ?」
「うーんアフリカとか?」
「なんでアフリカ」
「面白そうじゃん?」
「なんで旅行に行きたいの?」
「なんでって面白そうだからだろ」
「あっ、そう。」
「なんだよ?」
「いやぁ、旅に出たくなるのは、昔から変わらないんだなぁって」
「なんだそりゃ?」
「人間って旅が好きなんだな〜」

End.

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テーマの著者 Anders Norén