自分はいつも一番乗り。
まだ開いてない裏口から鍵を使って開けて中へ入る。
ロッカールームへ行き荷物を置いて制服に着替えて、ロビーの電気をつけてデスクへ。
細々と雑務をしてるうちに、見回りの派遣がやってくる。「おはよう」「おはようございまーす」
館内の電気を全部つけてホウキとチリトリを持ってくる。ゴミが落ちてないか点検して一通り見回ったら、観葉植物に葉水をやってシャッターを開ける。
そしていつも最初にやってくる客へ向かってしゃがみこんだ。
「おはよう」
にゃおん、と鳴く猫。
どっかの野良猫なのか飼い猫なのかは解らない。
エサはやったことないんだけど、なぜかいつも挨拶しにくる。
撫でてやるとゴロゴロと腹をみせて寝転がり、急に思い出したみたいに立ち上がる。
何事も無かったかのように帰っていって茂みへ消える。
「おはようございます!」
「おー、おはよう」
「今日も私が一番乗りですか?」
「うん?」
そうだなぁ。あの猫を除けば、一番乗りかもしれない。
「そうだね。早すぎじゃない?」
そう言うと彼女は笑った。
「朝の博物館って、人がいなくて静かで好きなんですよね〜」
あの猫が客じゃないとすれば……、生体展示物?
朝の博物館はいつも同じスタート。
一番乗りの俺と、警備員の派遣と、猫と、女の子。
大きなティラノサウルスの骨格標本に見下ろされながら、きょうも地球の1日が回っている。