ようやくおにぎりを口に含んだ。
砂のような口内に、ほんの少し、お米の甘みを感じた。
世界は今日も朝を迎えてて、いつもと変わらずなんでもない日を過ごす73億人。
シンクの下に眠っていた海苔を、どうにか引っ張り出してきた、そんな味がする。
浅い薄っぺらな磯の風味、そして塩気に気がついた。
きゅううう、突然お腹が動き始める。
食事を察知した胃が現実に気づいて慌て始める。
薄っぺらい磯の香りと、お米の甘さ、ひとつまみのお塩。
手のひらで握った丸み。
ひとのやさしさとぬくもり。
ゴクンとひとくちだけ飲み込んで、もう少しだけ大きく口を開いて齧ってみた。
現実を察知したお腹がぐううと嬉しそうに喚く。
飲み込む前にもうひとくち噛り付いた。
ろくに噛まずに飲み込んで勢いよくかじりつく。
半分よりも小さくなったおにぎりに気がついて、今度は何度も何度も咀嚼して大事に大事に飲み込んだ。
「美味しい?」
私は頷いた。
にこりと笑ったおばさんが、無言で頷いてくれた。
世界は今日も朝を迎えてて、いつもと変わらずなんでもない日を過ごす73億人。
2050年になる頃には97億人になるらしい。
私は頷いた。
私は、力強く頷いた。
1月17日はおむすびの日!おむすびの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–