店内を見回せば、備え付けのテーブルと、申し訳程度のちいさな椅子。
外の様子が見える窓際かモクモクと煙りの立つ喫煙席か。
呼ばれるように奥へ進むと、空気がうっすら白くなっている。
狭い店内にひしめく喫茶を楽しむ人々。
茶色の灰皿へトントン、タバコを当てて、5、6本の吸殻が見えた、中でも居心地の悪そうな中央の席へと座る。隣の席とを区切るように立てつけられた壁にメニュー。
眺めると、昔ながらの純喫茶らしいお品書き。
『おかわり自由』のコーヒー、紅茶、ミルクのホットとアイス。
定番らしいクリームソーダとメロンソーダ、コーヒーフロートにカフェモカにオレンジジュース、ココア。
モーニングセットはシンプルなトーストにゆで卵、ちいさなサラダにドリンクが付いている。写真の下に書かれた『終日OK。』の文字がもはやモーニングの意味をなしてない。
年の割に元気そうなおばちゃんが慣れた様子で水をテーブルへ配置しに来た。
「あ、ココアください」
「はい。」
決して感じの悪く無い、あっさりとした接客態度で調理場へと戻っていく。
あのおばちゃんが作るんだろうか?
店内を改めて見回すとその歴史の長さを感じた。
色あせたピンクの大きな電話。
レトロな黄色い光の照明。
見たことも無い形のシュガーポットに懐かしい雰囲気の塩のボトル。つまんで振ると、中に入ってる米粒が揺れてキンキンと可愛い音が鳴った。
「ココア」
テーブルに置いたはずみで、コンと音を鳴らす。
おばちゃんは決して感じの悪く無い、あっさりとした接客態度で調理場へと戻っていった。
ちいさなティーカップに浮いた生クリームとチョコレートソース。
ひとくち飲むと、懐かしい味がした。
4月13日は喫茶店の日!喫茶店の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–