365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 4.4

ふにふにの柔らかな触り心地と、香ばしい匂いと、ずしっと安定感のある重み。

指に力を入れると、指に沿ってふわりと凹んだ。

低反発マクラのように、むむむっ、とゆっくり押し返してくる。

はむりと嚙みつけば、しっとりとした柔らかさか唇にあたる。

そのままグッと、歯を立てて噛みちぎった。

グンッ、と噛み切る感触。

ずっしりと詰まった餡子の風味が口内に広がって、ほんの少し触れた餡子の甘さで唾液が滲んできた気がした。

外を見れば、天気の良い穏やかな昼下がり。

住宅街の小道を、ときどき車が進んでいく。

桜の花びらは散り、残った額が紅色を残す。

一見枯れ木のようで、覗く新芽の青さが新しい季節が来たと知らせてくれる。

モグモグと味わえば、密度の高いこしあんがくちいっぱいに広がっていく。

春だなぁ、と眠くなる。

あんぱんうまー、と心の中で呟いた。

---スポンサーサーチ---

4月4日はあんぱんの日!あんぱんの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

次へ 投稿

前へ 投稿

© 2024 365文

テーマの著者 Anders Norén