365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 9.28

「先輩~コレってどうやるんですか~」
「えー?ググってみてー」
「そんなの解りません!」
「ええ?なんで」

後輩は困った顔、いやむしろ怒った様子でこちらを見ている。
ググるのが解らない、という発言が予想外すぎて戸惑っていると、「もういいです」とうとう怒ってしまった。

「え、なんてググったら良いか解らないってこと?」

聞いてみるけど「無理なんです」と頑なだ。

よくよく話を聞いてみると、自分が保存したファイルがどこに行ったのか解らなくなってしまったらしい。

なんだそうゆう事か、と助言を変える。

「パソコンの左下に文字を打てる場所があるでしょ?そこに書類の名前を打ち込んでみて」
「名前も覚えてません」
「ああ……、じゃあ拡張子を」
「かくちょうしってなんですか?」
「何のソフトで作った書類なの?エクセル?ワード?」
「ワードですけど…」
「じゃあ試しに.docって打ってみて」
「あ!!!たぶんコレです!」
「そっかそっか、良かったね」
「なんで見つけられたんですか?」
「私パソコン好きだからね~」
「答えになってないですよ~!」
「dosの頃もあったからすごい事だよねぇ~」
「ドス?」
「今よりもっと昔のパソコンの話だよ~」

後輩は興味なさそうに「そうなんですね~」と笑顔を返してくれた。

パソコンの進歩はめまぐるしい。

しかし時々、なんでも簡単に出来すぎてしまうせいで、パソコンの中身が物凄い事をしているんだと知らない人も多い。

「すごいこっちゃ~」

私も興味なさそうに呟いておいた。

後輩はすでに、自分の画面の中へと集中していた。

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