365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 9.23

『さようなら〜!』

久しぶりに実家へ帰って、自分部屋に入った。

小学校に上がる前に買ってもらった学習机。
引き出しを開けた時、小さな長細い黒い箱が目に入った。

懐かしくてその小箱を開けると、黒い万年筆が出てきた。

卒業式の日に、全員貰った万年筆だ。

側面には自分の名前が入っている。

全然使わず、しまい込んだままの万年筆。

初めて見たときは、なんだか大人になったような気がして嬉しかったっけ。

結局使うタイミングなんて無いまま今の今まで存在も忘れてた。

『さようなら〜!』

卒業式が終わってみんなが帰る中、そう挨拶した声を思い出した。

今とは苗字が違う万年筆。

小箱に戻して、カバンの中に入れた。

End.

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テーマの著者 Anders Norén