『さようなら〜!』
久しぶりに実家へ帰って、自分部屋に入った。
小学校に上がる前に買ってもらった学習机。
引き出しを開けた時、小さな長細い黒い箱が目に入った。
懐かしくてその小箱を開けると、黒い万年筆が出てきた。
卒業式の日に、全員貰った万年筆だ。
側面には自分の名前が入っている。
全然使わず、しまい込んだままの万年筆。
初めて見たときは、なんだか大人になったような気がして嬉しかったっけ。
結局使うタイミングなんて無いまま今の今まで存在も忘れてた。
『さようなら〜!』
卒業式が終わってみんなが帰る中、そう挨拶した声を思い出した。
今とは苗字が違う万年筆。
小箱に戻して、カバンの中に入れた。
End.