365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 9.19

「今日は遺品整理の日」
「・・・なんで?」
「きょうはクイックだから」
「クイックって、早いって事?」
「そう」
「早く遺品整理しようってこと?」
「そう!」
「え・・・それってなんか微妙じゃない」
「そんなことないよ!」
「なんで?早く忘れろってことでしょ?忘れないほうが良いんじゃないかなぁ」
「そうねぇ。そういう時もあるけどね。」
「えー?なんか他に理由はある?」
「世の中には、忘れたくないひともいるのよ」
「忘れたくない人?」
「そう。もういないって解ってても、忘れたくない人」
「忘れない方がいいんじゃない?」
「うーん。でもね。故人は、覚えていても、忘れていても、もう帰ってくることはないのよ」
「そんなの解ってるけど」
「遺品を整理することでね、わたしは、時間が止まった人には、進んで欲しいと思ってるの」
「時間がとまったひと・・・」
「そう。進めなくなってしまった人。」
「なるほど・・・」
「九月はお彼岸でしょう。月が丸くて、綺麗なの。」
「うん。」
「でもね、故人を偲ぶには、淋しすぎるの」
「うん・・・」
「だからね。早く整理して、進んで欲しいの」
「そっか。

・・・そうゆう人も、いるかぁ」

夜空はすっかり遠くて、月はぽっかり淋しく浮かぶ。

たしかに、ひとりで見るには寂しすぎるかもしれない。

たくさん食べて、前に進もう。

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9月19日は遺品整理の日!遺品整理の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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テーマの著者 Anders Norén