365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 9.10

見えないくらいがちょうど良いから、ときどき眼鏡なんていらないかなって思う時がある。

「あれ、今日もしかしてコンタクト?」
「うんにゃ、裸眼ー」
「えーじゃあ見えないじゃん?」
「うんまぁ…でも歩けるし」
「ふーん。どんくらい目悪いの?これ見える?」
「見えるよー2本でしょ?」
「じゃあコレは?」
「途中で指変えるてんじゃん」
「おー見えてんのか」
「見えてるわー」

やっぱたまには良いかもしれない、眼鏡しないで、目が悪いままってのも。

「あ、今日も裸眼だ?」
「そー」

なーんて。実はコンタクトをしてみた。初めてのコンタクトだけど、ちょっと驚かせようかと思って。

「・・・」
「眼鏡なしもカワイーじゃん?お前コンタクトにすれば」

…と言ったコイツの視線が、一日中痛くて、実は結構見てたんだなって気がついてしまった。

「おはよー」
「おはよー」
「今日も裸眼だ?」
「今日はコンタクト!」
「あ、そーなの。やっぱ良いじゃん」

…と言ったコイツは、昨日とは打って変わって全然見てない。

(……裸眼ってウソついたら、また見るのかな)

それから『裸眼だよ』とウソをついた事は無い。

もし裸眼だよってウソをついて、マジで見てたらコエーなって、ちょっと思っちゃったから。

「おはよー」

End.

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