365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 8.28

「ねぇ、テレビってなぁに?」
「テレビはねぇ、昔はみんな家にディスプレイがあってね」
「ディスプレイ?パソコン?」
「うーん、タワー型パソコンがあるでしょう」
「うん。画面と本体を繋いで操作するパソコン?」
「そうよ。それの画面だけが家にあってね」
「画面だけ??」
「そう、画面だけ」
「それで、何を見るの?」
「テレビ番組を見るのよ」
「テレビ番組?」
「そうねぇ。10チャンネルぐらいあるの」
「10チャンネル?」
「そう、地方によって、放送してる内容も違ってね」
「なんで?」
「うーん、アンテナの電波が届かなかったのよ。地方番組があってね」
「???」

2XXX年、テレビという存在は既にない。
テレビという存在を、今の若い世代に伝えるのはひと苦労だ。

でも、伝えたところで、今の世代に特になることなんてひとつもありゃしない。

テレビがあるからこそ、いまのネットチャンネルがあるのは確かだけど。

全く知らない世代に、それを伝えるのは本当に難しい。

「過去の遺物よ」

結局そう伝えるしかなくなって、遠くを眺めて言うほかない。

こどもはやっぱり頭上に『?』を浮かべたまま。

それでいいのよ。

きっと、もうそれでいいのよ。

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8月28日は民放テレビスタートの日!民放テレビスタートの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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