365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 8.24

飲みに行こうよと誘われて、いつも私は快諾する。

「俺けっこうお前の事好きだかんね」
「はいはい」
「あ!おい聞いてんのかよ!」
「聞いてる聞いてる~」

ジンベースのカクテル、『ギムレット』。カクテル言葉は『遠い人を想う、長いお別れ』。

ツンとした爽やかな風味が喉に刺さる。

黄緑色したライムの輪切りがカクテルグラスを飾る。近いようで、遠い友人。

酒好きという事になってるけど、ただ飲みたいだけなんだなとは気がついている。
でも、いつまで経っても『酔ってない』時に『好きだ』と言ってくれないから、この関係は進まない。

進める気も無い。

「アイツまた新しい彼女出来たらしいよー」
「あー、そうなんだー」
「飲んだ後にそのままだってー相変わらずエグいよねー」
「ふーん。まぁいーんじゃない」
「そんなんで出来た彼女、どーせまた長続きしないのに。ちゃんとした彼女つくんないのかな?」
「ね~」
「あんた彼女になってあげれば?」
「はは。無いなー」

もし酔ってない時に好きだって真剣に言われたら、多分私はOKすると思う。
まあ、そのとき私に相手が居なければ、だけど。

「仲良いよね?よく飲みに行ってない?」
「あー、まあたまにね~」
「アイツとは無い?」

だけどアイツが酔ってない時に言ってくる事はこの先もきっと無いから、この関係はきっとずっとこのまま進まない。

「無いなー」

End.

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