365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 8.24

「じゃあそこにあるの一枚取って、上下Mサイズかな…いやーSかな」
「あ、はい…。あ、Sのが良さそうです」
「うん。けっこうサイズ大きめに作られてるからね。私もS着てるから。」
「はい」
「3回くらい着て、汚れてきたらココのカゴに入れてね。すごい汚れちゃった時とかは、ぜんぜんすぐカゴに入れて大丈夫だから」
「あ、はい。」

初めての飲食店のバイト。キッチンでの仕事だからユニフォームに着替える。
よく見るような白いコックさんみたいな服。けっこうしっかりした生地で丈夫そう。薄いビニールに入っているユニフォームは、きっちりと畳んであってキレイだ。

「あれ?」
「ん?」
「あ、ボタンが」
「え?あー。ボタン取れ掛かってるね。他の着ていいよ。おなじSで」
「え?いいんですか」
「いいのいいの。ボタン取れ掛かってるやつは、そこのカゴに入れてね」
「はい。これって、カゴに入れたらどうなるんですか?」
「んー、たぶん直してくれるっぽい。ボタン取れ掛かってるって、なんか紙に書いて、ビニールの上から貼っておいてくれる?見えやすい用に」
「あ・はい。……あ、これって、どうやって洗ったらいいんですか?洗濯機とかでいいんですかね……」
「あー。それね、レンタルなんだよ!」
「え?」
「レンタルのユニフォームなの。カゴに入れておけば、クリーニングしてくれて、また新しいのが入ってくるの。だからね、洗濯はうちらはしないんだよ」
「へぇ~……そんなのあるんですねぇ」
「そう。そんなのあるのよ~。便利だよね。」

初めてのバイト先でついてくれたのは面倒見の良いお姉さんだった。いつも優しく何でも教えてくれる。

「あとね、髪の毛。食べ物に入らないように帽子も被ってね。ピンとかで留めると落ちてこないよ。はい、ピン貸すよ」
「え、あ、ありがとうございます。」

やさしいお姉さん。

帽子をあげるのも様になってる。耳から覗くピアスはけっこう太くて、ボディピアス?かっこいい。

「先輩、これどうやったら良いんですか~?」
「ん?ああ、それはね……。」

わたしの中にある『先輩』像は、今思えばあのとき優しく教えてくれたお姉さん。

「先輩がしてるピアス、かっこいいですよね」
「お?ふふ、そうでしょ?」

あのお姉さんに憧れて。耳に空いてるボディピアスサイズのピアスホールは4個。
先輩はもっと沢山つけてたんだよね。前田さん、元気かなぁ。

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8月24日はレンタルユニフォームの日!レンタルユニフォームの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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