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365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 8.10

道の日

中学生の頃の話。

友人と、5駅先のショッピングモールへ出かけた。

お互いに、何度か車では連れて行って貰ったことのあるショッピングモールだ。

2人きりで行った事は無かったけれど、冒険心みたいなものが湧いてきたのだ。

たった5駅。されど5駅。

5駅までの間に分岐点があったのを、私たちは知らない。

見慣れない光景が増えてきて、お互い何となく気が付く。

だけどなぜか言えなくて、
しばらくそのまま乗っていて、
だけどとうとう怖くなって、
いよいよ、とある駅で降りた。

全然違う場所へ来たのは、お互い何となく解った。

周りは山と道路と田んぼしかない。

帰りの電車は2時間後だった。

ゆっくり揺らぐ田んぼ。青い空。繋がれてた家畜の牛。帰れないかもしれない不安。何もない駅。見渡す限り、誰もいない土地。

あの時行ったあの場所は、今はもう絶対に辿り着けない場所だ。

「ずっと歩いたら、たぶん戻れる(笑)」

そう言って笑ったあの場所は、たぶんもう行けない場所。

どんなに道が張り巡らされていても、
どんなにお金があっても、
とっくに大人になっていても、

もう二度と辿り着けない場所はあるのだ。

End.

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