365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 7.13

『もつ煮込み』のメニューを見て、思わずゴクリと唾を飲む。

が、しかし、間違っても、ここで頼んではいけない。

そもそも女性ひとりで居酒屋にいる時点でヤバいのに、さらにもつ煮込みなんて頼んだら、周りのおじさんに白い目で見られるに決まってる。

視界の端で黄色い紙に書かれた『もつ煮込み ¥540』の文字を見ながら、コップを傾ける。

「おやじ!もつ煮込み!」
「あいよぉ~!」

威勢の良いおっちゃん達の声。
目の前にあるカウンターで、そんなやりとりが成される。
おっちゃんはこちらに背を向けコンロに掛けてた鍋からひとすくい。

「もつ煮込みお待ちぃ!」

青い和柄が入った器に盛られたもつ煮込み。

ほくほく湯気が良い~香り。

となりのおっちゃんは箸でモツを掴んで、クイッと焼酎を傾ける。

「っあ~~~や~~~っぱうまいねぇ!」

ぜったいトロトロのほくほくで美味しいモツ煮込み。

結局数分もしないうちにモツ煮込みと焼酎を頼んだのだった。

「おねーちゃん、渋いねぇ~!」

おっちゃんとはめっちゃ仲良くなった。

今は週3回でココへ来ている。

・・・だめだこりゃ。

End.

次へ 投稿

前へ 投稿

© 2024 365文

テーマの著者 Anders Norén