父の日に、あの少年を見かけた。
少年は中年男性と手を繋いで歩いていた。
楽しそうに笑って、男性を見上げる少年。
母親は今日は居ないのだろう。ふたりで連れ立ち、歩いている。
5丁目の角に住む奥さんところの一人息子。ひな祭りの日に正座をして、まっすぐ静かに雛飾りを見ていた少年。
彼の両親は少し前に離婚して、母子家庭。
事情は色々聞いている。
楽しそうに笑う少年。
心にグッと楊枝が刺さるような痛み。
放っておいてあげたいのに、放っておけないような。
だけど、放っておいてほしそうな。
今日はきっと、楽しいひとときなんだろう。
彼の事は、そっとしておこう。
声を掛けるのを止めて、そんなことを想った。
End.