365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 5.9

嬉々とした目で見つめられて午前0時。

イヤな予感を察知しながら無視を決め込む。

蒸し暑い夜。夜でも真夏を感じる暑い夜。

「行「行かない」く?」

喰い気味で拒否を伝えると「ええ〜〜〜?!」と心底残念そうな声を出されて「行かないよ!ひとりでどうぞ!」と伝えた。

まるで「ひどい・・・」でも言うように悲しげな視線を投げかけてくる。

むしろ断った私が『悪人』のような態度。

深夜のバラエティー番組が楽しそうに高い音色で騒ぐ。冷蔵庫がブゥンと低い声で唸る。

「行こうよ〜〜!!」もはや強引に勧める方向へ舵を切ったらしい。

「ねえねえ!」と腕を揺さぶられて、「っあ〜〜〜もうハイハイ、じゃあさっさと行くよ!あと30分も無いんだから!」と立ち上がり、ジャージのまま家を出る。外はもちろん蒸し暑い。狭い路地、ときどき自転車が追い越していく。車通りの多い大通り。夜でも交通量は多い。ヘッドライトが道路を照らす。バイクが通ってトラックが通って音がうるさい。

夜道を歩けば3分も経たずにコンビニへたどり着く。「どれにしよっかなぁ〜」とショーケースをのぞき込むとヒヤリと冷気が舞い込んだ。

「うぉ〜さむっ!」冷えた店内と冷蔵庫はキンキン。

「買う?買う?」お互いのタイミングを計りながらレジへ連なり並ぶ。レジ袋を受け取って外へ出るとまた蒸し暑い夜。

来た道を戻り3分、マンションに帰ってきた。部屋の鍵を開けてリビング、いつもの場所に座り付けっぱなしのテレビを眺める。

程なくしてバラエティ番組が始まった。楽しみにしていた週一回のバラエティ。

ビニール袋を開けて、ようやくアイスクリームにかじり付いた。

画面の中は楽しそうなバラエティ。

けらけら笑いながらアイスクリームを懸命に食べる。

あっと言う間に無くなる。

アイスクリームは、夜のご褒美の味。

End.

次へ 投稿

前へ 投稿

© 2024 365文

テーマの著者 Anders Norén