365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 5.30

ふわっと現金が手元からさらわれた。

宙に浮かぶ一万円札。

やばいやばい、と慌てて掴もうと走り出す。

だけど車の多い大通り。

偶然にも車が通ってなかった瞬間に慌てて跳ねた。

見上げた空。浮いた一万円札。つよい風に巻き上げられて。

ぎゅっと握って慌てて元いた場所へ。

拳つくった片手で「セ~~~フ!!!!」思わず笑う。

例えばキャッシュレスの時代になったら、こんな苦労をすることもないんだろうな。

カード一枚。いやスマホ一台。

ポケットから出してスムーズにお会計。

その光景を思い出したとき、ふと想像したのは、沢山の現金がビルの上から舞い落ちてくる映像。

あぁ、そうゆうことは、もうこれからの時代、減るのかなぁ。

銀行強盗が、オンラインバンクからの強盗になって。

拳銃一丁持ってたのが、パソコンの前でサーバーにアクセスする。

お金なんて全然関係がないのに、なぜか『情緒』に価値を見いだしてしまった。

……いかんいかん、私も古い人間だなと、自分を戒めて。

ピロリン、と鳴る決済音に、これからは情緒を覚えるのかもしれない。

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5月30日はキャッシュレスの日!キャッシュレスの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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