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365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 4.27

まともに仕事もしないで毎日毎日フラフラほっつき回って相手を捩じ伏せて。

子供の面倒も見ずに、それが仕事だなんて言う。

「今日はパンしか無いわよ」

フラフラしてた旦那が帰ってきたから、わざとそんな風に言ってやった。
パンを置くついでに、もう片方の手で強くテーブルを叩いてやった。

「人はパンのみで生きるにあらず」と言ってチビチビとパンの端くれから貧乏人らしく食べ始める。

ああもう意味わかんない。こんな生活もううんざり、子供の事も考えずに毎日毎日!!

「このパンだって貰ったものなんだから!あなたの稼ぎじゃないのよ!?いい加減働にしてよ!毎日毎日ほっつきまわって!」

人の話も聞かずに今度は外を見る始末。イライラしてるところへ人がやってきたらしい。ドアを開けると「やあやあ」と友達みたいな奴らがやってきた。

「これを差し上げましょう」と果物と野菜と肉を置いて帰っていった。

確かに『人はパンのみでうんたら』じゃないかもしれない。だけどじゃあ私は、わたしは一体どんな気持ちでやっていったらいいの?!

とうとう涙が溢れてきて泣いた。思い切り泣いた、当てつけるようにわんわん泣いた。

ーーーーー

一回り以上年下の女を嫁に貰い、プータローで子供が3人、ソクラテスは仕事をせずに街へ出掛けては人を捕まえ、いちいち説き伏せたと言う。

4月27日は哲学の日、転じて悪妻の日。

悪妻と呼ばれたクサンティッペとは一体どんな人だったのだろう。

ソクラテスと共に過ごした彼女の話をする者は居ない。

彼女の事を思えば、同じ女として同情しか出来ないのだったーー

End.

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テーマの著者 Anders Norén