自分の席から見えるのは、谷口さんの後頭部。
谷口さんのおやつの時間は毎日、3時。
彼女がおやつを食べる時は、だいたいひとつずつだけ食べる。
30分くらいかけて、のんびり食べる。
取り引き先から金平糖を貰うと、その姿を確認するように僕はいつも指先を見てしまう。
ゆっくり食べるその姿は、なんだかとても金平糖のことを大事にしてるように見えるんだ。
谷口さんが金平糖を食べる時、30分で何個食べてるのか、数えようと挑戦してみたことがある。
だけど毎回それは叶わない。途中で電話が鳴ったり来客があったり、話しかけられたりして、何個目なのか解らなくなってしまうんだ。
谷口さんは基本的には煎茶を飲む。だけど時々紅茶を飲む。
そんな時は、白い角砂糖をひとつ入れる。
彼女の中に決まった規則正しい何かを感じる。そんな彼女のおしゃべりは意外とキツめ。
だけどなぜか、上品に感じる。
機械的なようで、時々そのルールがズレるとき。
紅茶の日は白砂糖をひとつ。
ただし小野寺と話した日は、砂糖はゼロ個。
慌ててるのか嬉しいのか怖いのか
規則的な谷口さんの『ときどき』紅茶を飲む日。
谷口さんを観察してみるけど、そのルールはまだ解らない。
途中で電話が鳴ったり、来客があったり、話しかけられたりして、そうそう見てられないから。
谷口さんのルールがズレるとき。
紅茶の日は、俺と話した日?
……なワケ、無いか。
3月10日は砂糖の日!砂糖の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–