365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 12.29

「お前、アレ買ったか」

父の言うアレとはアレだ。
毎年毎年口癖のように言う。
てゆうかもはや呪文。
あたしはいつも鬱陶しいと思って気持ちが悪くなる。
ろくに返事もせず無視した。

「おっ、コレもうまそうだな」

そして勝手に籠に入れる。
重くなったカゴの中を見ると酒のツマミが入ってた。
バカみたいにいつも食べてる柿の種。
何が美味しいのかあたしには良くわかんない。

コレも、って。最初から入れるつもりだったんでしょうに。
まぁお金払うのはお父さんだから良いんだけどさ。

「アレ入ってないぞ、おい」

嬉しそうにこっちに寄ってきて私に訴えてくる。
あんまり寄らないでよ気持ち悪い、そう思いながら無視して歩く。
冷たい加工食品が並ぶ前に来て一瞥。
お父さんは

「おっ!わかってるじゃーん!」

と得意げに言う。

鬱陶しい、と思いながら私は手を伸ばした。

正月飾りも付けちゃって、冷蔵の商品棚が今日は得意げにそこに居る。
いつもはこんな場所にこんなショーケースなんて無いのに、もうすぐ正月だからってきっと倉庫の奥から連れてこられたんだろう。
これでもかってほどぎゅうぎゅうに並べられた商品達も、今か今かと気取ってる。

紅白蒲鉾、黒豆、栗きんとん。
昆布巻き、なます酢だこ数の子に、
里芋タケノコさやえんどう。

赤いウネウネは見た目がキモくてちょっとキライ。

数の子は子宝繁栄。
黒豆は色黒になるくらいマメに、
よろコンブ、長寿のチョロギ。

「紅白蒲鉾の赤は魔除けなんだよ。知ってる?」

出ましたご自慢の正月口上。
知ってるよ、の一言いうのもめんどくさい。毎年飽きずに聞かせてくるのにもうウンザリだ。

「そして白は清めの白。」

「紀文の伊達巻は?」

「美味いから!」

得意げな父の大きな声が恥ずかしい。
紀文の伊達巻をカゴに入れた。

「伊達巻はやっぱりキブンだな!」

そうね。
紀文の伊達巻のパッケージも良く知らないくせにね。

私は得意げに頬張った。

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12月29日は福の日!福の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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