365 SS 12.18

やかましい店主の口上に煽る客の声、張り上げる楽しそうな会話と押し寄せる人並みにまた流されそうになりながら、足を踏ん張る。

ひやりと冷たい空気が顔を掠めて耳が冷たい。手で掴んで温めると、キィンと音が聞こえるみたいにてのひらが冷える。

「すごい人だね!」
「すごい人だわ!!」

負けないように声を張り上げて返事した。右から左から正面から押し寄せる人人人。

赤い髪をした大学生みたいな青年も完全武装でやって来てるおばちゃんも、肩車されてる女の子も興奮気味で英語をまくし立てる外人もみんな笑顔だった。

向こうからは急いでるのか、無理やり人波をクロールで渡りたがるダウンを着たおばさん。イライラして怒号を飛ばし始めるおじいちゃん。
時々通り過ぎるポニーテールが顔に当たって気持ち悪い。頭を振って逃げてるうちに右からフェイクファーが追ってきて鼻がムズムズする。

右から押されて左へよろけて、前から流されそうになって後ろへつんのめった。

「みんな何買いに来てんだろうね?!」

笑いながら振り返った他人のお母さん。

「福を買いに来てんだよ!」

と返事するお父さん。

「福ってなあに?ねえ!!」と構ってもらいたがりの男の子。

それでふっと、気がついた。

寒くない。

顔は冷たいけど、風もぴゅうぴゅう時々吹くけど、寒くない。

「みんな何買いに来てんの?!」ねえねえ!
男の子が一生懸命上を見ながら騒いでる。

色鮮やかな羽子板の先が飛び出してる袋が時々通り過ぎる。

一足早く正月気分を味わうけれど、まだクリスマスも始まってない。

身を引き締める思いで、五重塔を見上げた。

End.