365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 3.27

一生懸命、光へと枝を伸ばす桜。

ひとつひとつは白に見えるソレは、沢山集まってベビーピンクの淡い色合いで咲いている。

「キレーだねぇ〜」
「ほーんとよねー!」

昼休みのほんのひととき。
オフィスビルの合間に現れた桜のトンネル。

少し前まではただの木が並ぶだけの道路も、この時期はまるで天からの贈り物みたいだ。

「日本に生まれて良かった〜」
「ねー!」

近隣で働くひとたちも皆同様に見にきたんだろう。

スーツでネクタイなおじさん、お財布を抱きしめるOL達も空を見上げている。
なんだか今の時間だけ遊びに来てるみたいな気分になる。

「このまま遊びに行きたーい」
「ほんとだね〜」

みんなおもいおもいに桜を楽しんでいる。

写真をとったり、ぼーっと眺めたり。

「ベビーピンク可愛いねー!」
「かわいいねぇ。控えめ、ワビサビ。思いやり」
「オモテナシ!」
「モッタイナイ、譲り合い」
「有言実行!」
「ソビバビ」
「そび?」
「鼠尾馬尾。ねずみのしっぽ、うまのしっぽって事だよ」
「へーえ」

淡い色合いの優しい桃色。

白の花びらが沢山集まって、ピンク色を発色してるんだろう。

空と同じ?海と同じ?沢山集まって、青に見える。沢山集まって、ピンク色になる。

沢山集まって、それが『何か』になって行く。

ここにいる人達も、ひとりひとりはただの人間だけど、沢山集まって『何か』になるのかもしれない。

ひとつひとつの暮らしが、性格が、行動が沢山あつまって、『日本』になるのかもしれない。

私は日本人で、いつものコンビニで働いてるあの人はたぶん台湾人。時々通るヒップホップな店前で客引きをしてるあの人はきっとアメリカ人。駅前の服屋でレジをしてるあの人はおそらく中国人。

いろんな人がいるけど、集まってしまえばみんなただの人間。

日本にいるひとたちが日本を作る。

沢山集まって日本をつくる。

いまの日本はどんな色だろう。淡いピンクか、それとも?

水墨画のような淡い桜の画から、だんだん油絵みたいなハッキリした濃淡の画に移り変わっていくのかもしれない。

だけどまぁ、それも風流。

それも文化。

沢山集まった桜は、うっすら優しい淡い桃色。

きっと来年も再来年もその先も優しい桃色。

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