「私が見てる青と、あなたが見てる青が違ったらどう思う?」
「は?」
私には幽霊が見える。
「例えば、青だと思ってたものが本当は赤だったみたいな」
「は?は?意味わかんない、青がなに?青が見えないの?急にどうしちゃったの?」
「あっ、何でもない、用事思い出した!帰るね!!」
どうしても気になって他の人がどう思ってるか聞きたかった。
だけど『幽霊が見える』なんて言っても信じてもらえない。
信じてもらえないだけなら良いけど、そのせいでウソつきって呼ばれたり意地悪されたりするようになる。
だからちょっと違う質問をしてみたけど、結局伝わらない。
「ウノしようぜ〜」
私はウノが好きだ。赤、青、黄色、緑のカード。
「……、」
カードに近づいて、じいっと見つめる男の子。
「早くしろよ!」
「何してんの?」
「うるせーな、見えねぇんだよ!」
「緑だよ」
「緑か」
見えないってそうゆうことで、見えるってのはそうゆうことだ。
「ウノ!」
「げ!じゃあ……青で!」
「青か〜」
「俺もウノ!」
「わー、じゃあ赤にする」
「えーと、スキップ!」
「うわ!飛ばされた〜」
「俺リバースしか無いよ〜!!」
「マジかよ!!ヨッシャあがり〜っ!!」
「げ〜!!」
緑がよく見えない男の子と、幽霊が見える私。
見える事はこんなに良いことなのに、見えるからウソつきって言われる。
見えてるものが正しいか解らないって感覚。私には解る。
「ねえ、緑が見えないってどんな感じ?」
「お前、バカにしてんの?」
「……、ごめんなさい」
見える人と見えない人は、似てるようで全然違った。
「ねーねー、こないだ青が見えるって話してたじゃん」
「え、」
「こないだ。見える青が違ったらどうする?って」
「え、あ、そんな事言ったっけ?ごめん、覚えてないや」
「え、そうなの?結構深い話だと思ったのに」
「、不快?」
「え?いやいや、深い。考えたんだよ。どうなのかなって」
「え、考えたの?……どう思った?」
この子は見えてない人だ。だからきっと解らない。だけど聞いてみたかった。でも、受け入れてもらえなかったら悲しい。
見えない男の子にだって見えない見える世界があるのに。
私には見える悲しい世界ばっかり。
「もし見えてる青が違ったらさ、綺麗だと思う!」
「キレイ?」
「うん。だって違う青が見えてるんでしょ?」
「でも、相手はキレイだと思わないかもしれないよ。だって相手には、くすんだ青に見えてるかもしれないし」
「あぁ、そっかあああ」
「でしょ?そしたら、悲しいよ」
「そっかぁ……。」
曇った表情に私も悲しくなった。
キレイだって言ってくれたのに、くすんでるんだよって言ってしまった。
私に見えててこの子に見えてない世界。
暗くて悲しい世界をわざわざ突きつけて悲しい思いをさせてしまった。
やっぱり、言わない方がいいんだ。ずっとずうっと内緒にするべきなんだ。
「それでも、私は友達で居たいな」
「え?」
「もし見える世界が違っても、友達でいたい。あなたと」
「……、そうなの?」
「うん。くすんでても関係ないじゃん。違う色に見えてたら、友達じゃ居られないの?」
「……、そんなこと、ないよ」
「じゃあそれで!」
その子はニコッと笑って、清々しい表情を見せてくれた。
見えても見えなくても、友達でいれるんだ。
この子には見えなくても、私は友達で居てあげれば良いんだ。
同じものが見えないから友達じゃないって思ってたのは、私だったのかもしれない。
「そうだね。」
ほんの少しの寂しさと、たくさんの悲しみと、それから柔らかい気持ちが私には見えた。
夕焼けに負けない、強くて優しくて柔らかい色が、私には、見える。
やっぱり、私には『解る』のかもしれない。
優しい人の、心の色が。