365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

びーでえるな夢を見たので覚え書き

今朝はBLな夢を見た。
ので、覚え書き。

ほぼまるまる夢そのものだけど、ちょっと脚色して残しておく。

夢にしては良く出来てるなぁ~(まるでちゃんと(?)妄想したよう)と思って、けっこう夢をちゃんと覚えてるので、覚えてるうちに書く!

愛してるとは言わないでくれ

ある小さな街に男が2人いた。

「おい!どこに行きやがった!」
「うるせぇ!ここにいるだろうが!」

2人はずっとお互いを呼び合い、そして探している。

「なんだぁ!いよいよ逃げ出したかと思ったぜ!」
「逃げるわけがあるもんか!たかがお前相手に!」

2人はずっと遠すぎず近すぎない距離にいる。2人はいつも、相手を探し、隙さえあればやっつけようとしている。

お互いがお互いに負けたくないのだ。

「いい加減に諦めろってんだぁ!」
「そりゃあこっちのセリフだぁ!」

それは小さな小さな町。2人の男のことは、誰もが知っていて、誰もが見て見ぬ振りをする。

「ねぇママ!あの2人また喧嘩してるわ!」
「放っておきなさい。仲良しなのよ」
「えぇ?仲良しなの?あんなに喧嘩してるのに?」
「あんなに飽きもせず毎日毎日やりあってるのは仲が良いってことなのよ」
「ふぅん?」

2人の喧嘩はずっと続いた。雨の日も、風の日も、寒い冬の日も、穏やかな春も、汗が滴る夏だって。

「お前、いい加減負けを認めたらどうだ?!」
「お前こそ、いい加減やめたいんだろう?!」

いつも近くにいる2人。いつも名前を呼び合い、いつも相手を気にして、いつも相手を探している。隙があればやっつけようとしている。

2人の喧嘩はずっと続いた。雨の日も、風の日も、寒い冬の日も、穏やかな春も、汗が滴る夏も。あるとき町に狼が飛び込んできた日も、あるとき山賊が町を荒らした日も、あるとき町が焼き払われた日も。

「いい加減に諦めろってんだぁ!」
「そりゃあこっちのセリフだぁ!」

いつも2人はお互いを気にして、いつも2人は喧嘩をしている。
とうとう町がなくなって、2人の居場所はお互いにしかなくなった。

「おい!どこに行きやがった!」
「うるせぇ!ここにいるだろうが!」

2人の喧嘩はずっと続いた。雨の日も、風の日も、寒い冬の日も、穏やかな春も、汗が滴る夏も。あるとき足を怪我しても、あるとき流れ弾が当たって片腕を掠った時も、ふたりの目が悪くなってきても。

「いい加減に、諦めろってんだぁ!」
「そりゃあ、こっちのセリフだぁ!」

目指すところはお互いひとつ。ふたりの体力、ふたりの精神、ふたりの寿命、どれも限界に近づきつつあった。

「おい、いい加減、決着をつけようじゃねぇか!」
「おお。いつだって、やってやるぜ!」
「よしきた、あの塔の上にある赤い実を、先に掴んだ方が勝ちだ!」
「いいだろう、最後に勝つのは、俺だからなぁ!」

それは高い高い石で出来た塔。階段だけが延々と続く塔。一段一段がもうボロボロの、まるで2人のような塔。焼き払われた町で残った唯一の塔。

「サイアクだなぁ!!」
「こっちのセリフだ!!」

2人の喧嘩はずっと続いた。雨の日も、風の日も、寒い冬の日も、穏やかな春も、汗が滴る夏も。あるとき足を怪我しても、あるとき流れ弾が当たって片腕を掠った時も、ふたりの目が悪くなってきても。

「クソ、サイアクだなぁ!!」
「そりゃあ、こっちのセリフだぁ!!」

2人の最後は近づいていた。もう体力も気力も家族も街も2人にはなかった。

「あ、!」

見上げるとちょうど、先を歩いていた男が石段を踏み外したところだった。もう体力の限界で踏ん張る力が残ってない。体がよろめきそのまま吹き抜けの外へと転がり、ついに塔の外へと体が投げだされた。

落ち始めたのは一目瞭然だった。

「おい、おまえはそんなタマかよぉ!」

もうひとりの男が、その男の方へと飛び出した。吹き抜けの外へと転がり塔の外へと体が投げだされた。

上りに登った高い塔。落ち行くまでに随分長い時間が掛かった。空圧が下から上へと上昇していく。ふたりの体が空圧を裂きながら落下していく。
落下していくさなか2人は気を失った。あまりに長い時間が掛かり酸素が薄く呼吸が難しい、意識を失ったのだ。

2人の体が落ちていく。

落ちていく中、2人は出会い、手を取り、抱きとめ抱きしめた。

2人は今までで1番、充実した瞬間を感じていた。もうなにも言いたいことなどお互いなかった。2人はそれきり言葉を交わすことはなかった。

ふたりの居場所は、お互いの中だけにあった。

★愛してるとは言わないでくれ

end.

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