空が揺れた日
見上げると電線が大きくたわんでいた。大地が揺れてまともに立っていられない。
隣にいる先輩が悲鳴を上げながら私の腕を掴んだ。
私が目を回しているのか?錯覚は治まらない、小さな道路の前、スリッパのまま慌てて事務所から出てきた私と先輩だけがそこにいた。
念のため周囲を確認しながら、建物から離れようと出来るだけ道路の真ん中へ進む、腰を抜かし立てなくなった先輩の腕を握り返しながら、妙な高揚感が止まらない、これはまさしくアドレナリン、ドーパミンの類だろう、私は興奮していた。
全然と言って良いほど普段から車通りの無い脇道だったおかげで、私たちは安全だった。
大地は大きく大きく円を描くように揺れているみたいだ、まるで誰かがふるいに掛けているような、そんな揺れ方だった。
小麦粉にでもなったかのような、大きな強大な力に揺らされているような
誰かの悲鳴が聞こえる。真向かいのスーパーで買い物をしていた人だろう。眼を向けると同時にバリン、ガラスが割れる音が響く。そして店内が暗くなるのが見えた。
明るい白日の下、対照的なほど光を無くした真っ暗な店内は異様な光景だった。
ふるいに掛けられた私たちは、編み目を抜けられなかった小麦粉か、それともボウルの下へと降りた粉雪か?
その日、空が揺れた
End.