365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

春一番

ざんざんぶりの雨。

足は濡れて靴に染みて会話もままならない、いつもはうるさく感じる大通りを車が通る音も雨音に掻き消されて聞こえない

あまりの土砂降りで何かが壊れたのか、通り過ぎるビルから警報が鳴ってる音が鈍く響く。

歩いて歩いて雨の中。

駅に入ってようやくビショビショだった事に気づく。乗り込んだ電車は少しずつ遅延してく。

他の乗客も思い思いの憂いを帯びた3月1日。

そうしてたどり着いたのは見慣れた職場。なんにも面白くない楽しくない職場。

窓ガラスの向こう、外を見ると、朝の日射しが雲の隙間から伸びて中庭の植物を照らしてた。

雨あがりのコンクリートに雨粒がキラキラ光る

ぜんぜん面白くない楽しくない職場

ぜんぜんいつもとは違う3月1日。

新しい季節の始まり。

『春一番』

そんな単語が脳裏をよぎった。

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テーマの著者 Anders Norén