365 SS 12.7

キーーーン、

髪も服もはためき持って行かれそうになって、慌てて鞄を抱きしめた。
上空を通り過ぎる轟音に釣られるように空を見上げる。

色白の高い空は冬を表している

耳鳴りが少しずつ遠くなっていって、やがて着陸するんだろう。

低空飛行を続けるしっぽをぼんやりと眺めた。

小さい頃、親の転勤で遠くへ行ってしまったクラスメイトの事を思い出した。

あの子と確かに仲良くしてたはずなのに、あの子が今どうしてるか知らない。

『あの子のおうちは転勤族だったのよ』と、母が井戸端会議で仕入れた情報は随分あとになってから聞いた。

あの子もこの道を通ったんだろうか。

あの子も、こんな風にセンチメンタルな気持ちになったんだろうか。

そしてあの子は、どんな気持ちでこの地を離れていく景色を見下ろしたんだろうか。

あの時あの子が感じただろう体験を、あと二時間もすれば僕もする。

小さい頃分からなかった〝転勤族〟の意味が、もう大人になった今、僕も解る。

そして世代を越えて、あの子の両親の気持ちも知るのかもしれない。

空港まで、もう少し。
僕を待ってる新しい土地へ、再び足を踏み出した。

「いってきます」

そう呟いた言葉は
心の隅に居たあの子に、届いた気がした。

End.