加賀千代女が読んだ句だ。
『月も見て我はこの世をかしく哉』
月も見た。さぁて、わたしはこの世からしおれていくのだなぁ。
意味を組み合わせてそのまま読むと、そんな表現になると思う。
『しおれていく』はどうゆう意味?と言えば、つまり『この世を去る』と言う意味だろう。
この句は加賀千代女の最期の句。辞世の句だと言う。
自分がもうすぐこの世を去ると言うことを理解しながら詠んだ句。
末尾の『かな』は『だなぁ』の意味と捉らえられるが、哀愁が漂う。
死ぬことを覚悟しているにしては、ずいぶん穏やかな表情だったのではないだろうか。
『月も見て我はこの世をかしく哉』
加賀千代女は、幼少期から俳句を嗜み、俳句に生き、弟子を経て、『女流俳人』が加賀千代女の人生だったのではないかと思う。
その後、夫(あるいは想いを寄せていた人)と死別。
52で尼となり、約20年後、73歳没。
この時代にしては大往生だ。
1,700余の句を残したといわれている。
加賀千代女の生き様は、きっとおそらく、どんな時も、俳句が日常に即していたのではないだろうか。
特別なものではなく、なにかを表現するためのツール。
『月も見て我はこの世をかしく哉』
「さぁて、もうずいぶんわたしも生きた。そろそろ時期が来るのだな。月が出ている。」
ぼんやり月を眺めながら、そんな風に思って読んだ句ではないだろうか。
微笑むような、加賀千代女の表情が見える気がする。
辞世…死に挑んで残す詩歌
https://kotobank.jp/word/辞世-519854
かしく…やせ衰える。みすぼらしくなる。やつれる。(草木や花が)しおれる。
https://www.google.co.jp/amp/s/kobun.weblio.jp/content/amp/%25E3%2581%258B%25E3%2581%2597%25E3%2581%258F
かな【哉】
( 終助 )
〔係助詞「か」の文末用法に詠嘆の終助詞「な」が付いてできたもの。中古以降の語〕
体言およびそれに準ずるもの、活用語の連体形に付く。文末にあって、詠嘆・感動の意を表す。…だなあ。…なあ。
https://kotobank.jp/word/哉-464995
9月8日は千代尼忌!千代尼忌をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–