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365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 9.7

「あ!あの…、落としましたよ!」

拾ってもらったのはメガネクリーナー。

……そう、実を言うと、わざと落とした。

「あっ、ありがとうございますー…」

一昔前だったらハンカチを落としていただろうが俺は違う。よりナチュラルに、より会話のキッカケになるように…、

「あ、良かったらお礼に…」
「失礼します」

ペコっと軽く会釈をして彼女は足早に去っていった。

「……。」

手元に残された、変わった柄のメガネクリーナーを眺める。

絶対うまくいくと思ったのに、マジかよ…。

「変わった柄だねぇ」

目の前にいたおばあちゃんに話しかけられた。

「……はは、は!」

おばあちゃんの笑顔には、ほんの少し助けられた。

周りの視線を感じながら、とりあえず引きつった笑顔を返すしかなかった。

End.

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テーマの著者 Anders Norén