購買で買った『ランチパック』を持って友人が隣に座った。俺はまだなんも返事してないのに勝手に座るんじゃねぇ!!と思いつつ、「あぁ」と食べかけのパンを囓る。
「あれ?何味それ」
「タマゴ」
「だよね?なんかパッケージ違くない??」
「おまえのランチパック。俺のスナックサンド」
「え?ちょっと見して」
俺はまだ許可もなんもしてないのに、また勝手に袋をひっぱって見る。
「えなにこれ初めて見たんだけど」とビックリしている。
「はっ。そうだろ。俺のはスナックサンドだからな」
「え?なにそれパクリ?」
「パクリじゃねぇよっ!!!」
出たよこのランチパック勢がっっっ!!!
俺は、俺は、学校のすぐ近くでやってる小さな駄菓子屋で売ってる、このスナックサンドが大好きなんだ!!!
「えパクリじゃん。タマゴってほぼ見た目も同じじゃん」
「ちげーから!こっちフジパンだから!パッケージデザインも全然違うだろうが!!」
「えー。味は?」
「おれはこのスナックサンドが好きなんだよっ!」
「え、でもパクリでしょ?」
「ちっちっち!!!」
キタキタキタアアァ!!!!!!知らなかっただろう、お前に教えてやんよ!!
「残念でしたぁ!!スナックサンドが販売された方が先ですぅ!!つまりスナックサンドは言わば元祖!!!俺はオリジナルが好きなんだよっ!!!」
「あ、そうなんだー」
ザマァミロッ!!!!って内心では思いながら。まぁいい。どうせお前みたいなモテるやつには、スナックサンドのようなひっそりとした魅力も、元祖という事実も、あの学校のすぐ近くにある駄菓子屋の魅力もワカランだろう!!!
分かっている。どうせ俺とお前の間には、広く深く長い川が流れているのだ……っ!!
「えー。ちょっとひとくちちょーだい」
「えっ?」
「あーん」
「え」
俺が反応するより先に勝手にコイツは食って、「あー、こっちのがちょいしょっぱい感じ?これはこれでイイネ」なんて言ってのけた……。
「はい」
はい、と突き出されたランチパック。ぐいっと口元に持ってくるから思わず口を開ける。もぐもぐ食べたら、「ひとくち貰っちゃったからね。あんがと」と言われた……。
クッッッッ……こ、これだからモテるヤツは……!悔しい。こんなにサラッと人に一口あげたり、出来るなんて。俺には到底無理な話だ……。
「そっち、スナックサンドってどこで売ってんの?」
「え、あ……、駄菓子屋…」
「ガッコの坂降りたとこの?」
「あ、ああ…」
「あーあそこか。あのみせ、あんま朝早いと開いてないんだよなー」
「え、知ってんの……?」
「いやフツーに気付くじゃん?」
正直な事を言おう…。あの店、たぶん、割と目をこらさないと気がつかない。いや、少なくとも、俺はすぐには気がつけなかったんだ……。
くやしい…。俺はこんなにもこのスナックサンド愛があるって言うのに……。
「こんど一緒に買いに行こうぜ」
「えっ?」
「あのみせ昼休みに買いに行かないと開いてなくない?俺も行きたい」
「あ、う、うん……っ!」
うっっ、、、こうゆうモテるやつは、やっぱりどこまでもモテるのだ。本当にちょっとこんな会話しただけで性格の良さって分かるんだ……。
9月15日はスナックサンドの日!スナックサンドの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–