てかてかっとした液体のスープに、野菜が乗ってて、麺が入ってて。美味しそう。
見る限りきっと何かのラーメンっぽいけど、名前が解らない。
3人で入った中華料理屋。
割と本格的っぽい雰囲気で、漢字には何一つフリガナがない。
「…ねぇねぇこれって、なに?」
「んー?」
ちょうど二人を挟んで中央に座ってた自分は、両脇にメニューを見せて聞いてみた。
右には仲良しでしょっちゅう騒いでる友人。
左には頭脳明晰でなんにでも詳しい知識がある友人。
「スーラータンメン」
「サンラータンメン」
「おお、これ、タンメンか!」
二人に聞くと、タンメンって事が解った。
でもなぜ前半が違うのか?なんか微妙に違った気がするんだけど?
「え?いま何て言った?」
「スーラータンメン」
「サンラータンメン」
「え、なんか二人とも違くない?」
両脇を見ると自分越しにお互いジッと一瞬見合った後、
「いやスーラータンメン」
「サンラータンメンじゃね?」
とまた意見が割れている。
「え何々?どっちが正しいとかあるの?」
「普通はスーラータンメンて読むね」
「いやサンラータンメンだろ」
・・・あれれ、なんか、両脇でバチバチしてる?笑
両脇では、再びお互いジッと一瞬見合った後、
「スーラータンメンのがメジャーだよ」
「サンラータンメンのが解りやすい」
ってまた・・・。笑
「どっちでも良いってこと?スーラータンメンてそもそも何?」
と聞くと、右側の仲良い友人がすかさず「サンラータンに麺が入ってるからサンラータンメン」と言う。
すると直後に「でも普通はスーラータンメンって言うけどね」と物知りな頭の良い友人は言った。
「なるほど・・・。まぁ・・・アレだ。あれだな?どっちも間違いじゃないってことだな!」
とりあえず、なんか妙にバチバチしてる両脇の肩を同時に叩きつつ、「じゃあ俺コレ~!」と決める。
すぐさま右に座ってる仲良しの友人が「すいません」と店員を呼んでくれた。
「サンラータンメン2つ。あと餃子一皿」すかさず右にいた友人が、俺の分も注文してくれたらしい。
ちょっとムッとした左の友人が、「俺は回鍋肉で」と自分の分を注文した。
「スーラータンメン2つと餃子一皿、回鍋肉は定食で良いでしょうか?」
「えっ?ああ、はい。定食でお願いします」
「回鍋肉定食ですね。かしこまりました。」
店員がメモを取って、背中を向ける。右の友人がニヤリとしたら、
「あ!あとウーロン茶3人分」
と勝手に注文した。
「「「・・・。」」」
恐る恐る両脇を見ると、全員無言。と思いきやすぐに、
「店員さんはスーラータンメンって言ってたね」と言い切る。
すかさず左にいた友人が、「飲み物フツーは頼むだろ」と言う。
「・・・っあ~~!!なんかあれだな!漢字の読み方って色々あるんだな!ウーロン茶サンキューな!」
なんとかこの場を収めて。そしたら。
「「おまえ良い奴だな」」って両脇から言われた。
「いやいや・・・。つーかさ、二人ともそこは譲り合えよ。大人になれ。」
って呆れつつ言ってみたら、
両脇は、シュンって音が聞こえそうなほど静かになった。
ああもう!!スーラータンメンでもサンラータンメンでもどっちでも良いよ!もう!!!!
9月14日は揚州商人スーラータンメンの日!揚州商人スーラータンメンの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–