365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 9.14

メニューを開いて目に入ったのは『酸辣湯麺』。

てかてかっとした液体のスープに、野菜が乗ってて、麺が入ってて。美味しそう。

見る限りきっと何かのラーメンっぽいけど、名前が解らない。

3人で入った中華料理屋。

割と本格的っぽい雰囲気で、漢字には何一つフリガナがない。

「…ねぇねぇこれって、なに?」
「んー?」

ちょうど二人を挟んで中央に座ってた自分は、両脇にメニューを見せて聞いてみた。

右には仲良しでしょっちゅう騒いでる友人。
左には頭脳明晰でなんにでも詳しい知識がある友人。

「スーラータンメン」
「サンラータンメン」
「おお、これ、タンメンか!」

二人に聞くと、タンメンって事が解った。
でもなぜ前半が違うのか?なんか微妙に違った気がするんだけど?

「え?いま何て言った?」
「スーラータンメン」
「サンラータンメン」
「え、なんか二人とも違くない?」

両脇を見ると自分越しにお互いジッと一瞬見合った後、

「いやスーラータンメン」
「サンラータンメンじゃね?」
とまた意見が割れている。

「え何々?どっちが正しいとかあるの?」
「普通はスーラータンメンて読むね」
「いやサンラータンメンだろ」

・・・あれれ、なんか、両脇でバチバチしてる?笑

両脇では、再びお互いジッと一瞬見合った後、

「スーラータンメンのがメジャーだよ」
「サンラータンメンのが解りやすい」

ってまた・・・。笑

「どっちでも良いってこと?スーラータンメンてそもそも何?」

と聞くと、右側の仲良い友人がすかさず「サンラータンに麺が入ってるからサンラータンメン」と言う。

すると直後に「でも普通はスーラータンメンって言うけどね」と物知りな頭の良い友人は言った。

「なるほど・・・。まぁ・・・アレだ。あれだな?どっちも間違いじゃないってことだな!」

とりあえず、なんか妙にバチバチしてる両脇の肩を同時に叩きつつ、「じゃあ俺コレ~!」と決める。

すぐさま右に座ってる仲良しの友人が「すいません」と店員を呼んでくれた。

「サンラータンメン2つ。あと餃子一皿」すかさず右にいた友人が、俺の分も注文してくれたらしい。

ちょっとムッとした左の友人が、「俺は回鍋肉で」と自分の分を注文した。

「スーラータンメン2つと餃子一皿、回鍋肉は定食で良いでしょうか?」
「えっ?ああ、はい。定食でお願いします」
「回鍋肉定食ですね。かしこまりました。」

店員がメモを取って、背中を向ける。右の友人がニヤリとしたら、

「あ!あとウーロン茶3人分」

と勝手に注文した。

「「「・・・。」」」

恐る恐る両脇を見ると、全員無言。と思いきやすぐに、

「店員さんはスーラータンメンって言ってたね」と言い切る。

すかさず左にいた友人が、「飲み物フツーは頼むだろ」と言う。

「・・・っあ~~!!なんかあれだな!漢字の読み方って色々あるんだな!ウーロン茶サンキューな!」

なんとかこの場を収めて。そしたら。

「「おまえ良い奴だな」」って両脇から言われた。

「いやいや・・・。つーかさ、二人ともそこは譲り合えよ。大人になれ。」

って呆れつつ言ってみたら、

両脇は、シュンって音が聞こえそうなほど静かになった。

ああもう!!スーラータンメンでもサンラータンメンでもどっちでも良いよ!もう!!!!

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9月14日は揚州商人スーラータンメンの日!揚州商人スーラータンメンの日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–

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