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365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 8.30

太陽のようにニコニコ笑うクラスメイトは、本当に困ったことなんて何もないみたいな顔をしてて

そんな彼女が妬ましくて、仲良いフリをしながら本当は嫌いだった。

みんなもみんなでその子が好きで、だから余計に嫌だった。

私だって努力してるのに。私だってあの子より可愛いワンピース着てるのに。
ちょっと可愛いからって。ホントはそうでもないくせに。

それから数年経って同窓会の時。すっかり大人になったあの子は相変わらず可愛いし人気者だしで、あの子を見てるとやっぱり嫌になってくる。

その子の家が貧乏だったって知ったのは、その時の事だった。

しかも知らなかったのは私だけだった。「なんで教えてくれなかったの?」って友達に聞いたら、「あんた嫌いだったじゃん」って言われた。

あんまり居心地が悪いから、その日は逃げるように帰った。

帰り道、他人のコンビニ店員さんが笑いかける。「ありがとうございました~!」といつものわざとらし笑顔。

「・・・ありがとうございます。」

初めてその店員さんにお礼を言ってみた。ついでに、頑張って口角を上げてみた。引き攣ってて全然うまく笑えない。バカバカみたいだと思ったら、「あざっす!」と嬉しそうに店員さんがバカみたいな笑顔で言った。

見ず知らずの他人に笑顔で挨拶するなんてバカみたいだと思ってたけど、笑顔にも色んな事情があるのかもしれない。

これからは、もう少しだけ笑顔になる瞬間があっても良いのかもしれない、と思った。

End.

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テーマの著者 Anders Norén