365文

365日ぶんの、フラッシュ・フィクションたち。

365 SS 8.27

「気持ちの方がそうついてきてきちゃ、くれないんだよ。」

頭では理解してるはずなのに、どうにも納得できない。

理不尽な上司、つまらない相槌、意味のない飲み会、突然いなくなった人。

頭では知っているはずなのに、飲み込めない。

それは誰のせいでもない、自分のせいでもない。

「あたしゃわかってるはずなのにねぇ。」

「わかってるはずなのにって、なんだい?まる子」

「フーテンの寅さんがさ、ドラマの最終回じゃ死んぢまうんだよ。そんなの納得出来ないよ。だからみんな、続編を望んだんだねぇ」

「そうかそうか。フーテンの寅さんは映画じゃふつうに生きてたしなぁ」

「えっ、そうなの?!じいちゃん!」

「そうだとも。いくら死んだと言われたって、みんなの心の中には生きてたんじゃたあ。」

「そっかあ〜!すごいね、じいちゃん!」

「そうじゃなあ。わしが死んだとしても、みんなの心の中に残るような生き方をしたいのう」

「そうだねぇ。あたしゃ忘れないよ、じいちゃん!なんたって、じいちゃんがいなかったらあたしも生まれてないんだからね!」

「そうじゃのう。」

「じいちゃん!」

「まる子や」

キラキラとふたりは目を輝かせ、手を取り合った。

End.

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