「気持ちの方がそうついてきてきちゃ、くれないんだよ。」
頭では理解してるはずなのに、どうにも納得できない。
理不尽な上司、つまらない相槌、意味のない飲み会、突然いなくなった人。
頭では知っているはずなのに、飲み込めない。
それは誰のせいでもない、自分のせいでもない。
「あたしゃわかってるはずなのにねぇ。」
「わかってるはずなのにって、なんだい?まる子」
「フーテンの寅さんがさ、ドラマの最終回じゃ死んぢまうんだよ。そんなの納得出来ないよ。だからみんな、続編を望んだんだねぇ」
「そうかそうか。フーテンの寅さんは映画じゃふつうに生きてたしなぁ」
「えっ、そうなの?!じいちゃん!」
「そうだとも。いくら死んだと言われたって、みんなの心の中には生きてたんじゃたあ。」
「そっかあ〜!すごいね、じいちゃん!」
「そうじゃなあ。わしが死んだとしても、みんなの心の中に残るような生き方をしたいのう」
「そうだねぇ。あたしゃ忘れないよ、じいちゃん!なんたって、じいちゃんがいなかったらあたしも生まれてないんだからね!」
「そうじゃのう。」
「じいちゃん!」
「まる子や」
キラキラとふたりは目を輝かせ、手を取り合った。
End.