その様子を見て「出た」と無意識のまま声に出した。
「え?」
「ま~~~だ持ってんの、それ」
「え、持ってるでしょ!!当然」
せっかく運ばれてきた料理に、小さなヒョウタン型のボトルのキャップを外して慣れた様子で掛けていく。まんべんなく、表面が赤や黄色でまぶされていく。
「もーいーかげんやめたら?味覚おかしいんじゃないの」
「なんでよ!めっちゃおいしいのに!」
「なんでよってなんだよ!そんなまぶさなくたって、あーあーもう店員さんに失礼、料理にも!」
「え~~~!!!そんなことないって!よりいっそうおいしく食べたいから掛けてるの!おいしいんだって!」
マイバックが今みたいに当たり前の存在になるまえに、『マイ七味』がコイツの中では流行っていた。
それからず~~~~~~っと、マイ七味を持ち歩いている。絶対かさばるし邪魔だろ!
「んっ!!!うっまい!使う?」
「はあ?いらんわ!」
「うまいのに~!!」
「いやウマいのは解るけどね?さすがに使いすぎ」
と言いつつヒョウタンを借りてパラパラ。
「ぜったいこんなもんで良いでしょ」
と言って食べ始めた。
「ん!!!やっぱこの味!!夏には特にイイネ!!」
そう言ったところでちょ~~ど近づいてきてたらしい店員さんと目が合った。
店員さんは苦笑い。頬がひきつる。ちいさく会釈しておいた。
「っぉい!!!お前のせいで!!」
「はは~~~~!!いつもやんないのにね~。でもうまいでしょ~?」
「俺はそうゆう話をしてるんじゃないの!」
そうだよそうゆう話をしてるんじゃないんだよ。
でもさあ、この七味を作ってる業者さんだっているわけで。
そう思うと、業者さんにとっては嬉しいことかもな・・・。
★
「あれ!マイ七味!?」
「おう」
それから俺は、すっかりマイ七味派になってしまったのだった。
7月3日は七味の日!七味の日をテーマに書いたフラッシュ・フィクション。毎日『今日は何の日?』をテーマにショートショート書いています。–